不正検査やデータ改ざんなどの不祥事も、「ハイコンテクスト」な組織風土の産物
たとえば、とある日本を代表するような名門大企業で長年不正会計が行われてきたことが発覚した際に、こんな事象がありました。トップが目標業績数字に足りていない各部門長に対して、「達成に向けてチャレンジしろ」という、その組織特有の隠語を使って、暗黙のうちに不正に実績数字を作らせて結果的に組織ぐるみでの不正に至ったというのです。これはまさしく、「ハイコンテクスト」なやり取りに他なりません。
近年、毎年のように発覚する自動車メーカー各社や、大手機械メーカーなどでの不正検査やデータ改ざんなどの不祥事も、同じく「ハイコンテクスト」な組織風土の産物であるといえます。
不祥事が発覚したどの企業も判で押したように、無言のうちに、大きな疑問を抱くこともなく、組織内の常識として検査不正やデータ改ざんを繰り返してきたという、同じような構図が浮かび上がってきました。すなわち、個別企業の風土ではなく、まさに日本の昭和大企業共通の組織風土そのものであると感じさせられるのです。
ジャニーズの一件もその構図は全く一緒。真実を白日のもとにさらさなくていいのか、と自問をすることなく、ここは見て見ぬふりをするのが我々の常道である。そう、テレビも新聞も打ち合わせるわけでもないのに、判で押したように同じ対応をとっていたわけですから。
今回の問題は、ジャニー喜多川氏が既に他界し過去の不祥事になっているかもしれませんが、それを正当に扱ってこなかったメディア各社の対応は、いまだ「ハイコンテクスト」な組織風土を引きずり続けている現在進行形の企業不祥事であると思います。
「ハイコンテクスト」を美徳とすることに限らず、昭和由来の日本のビジネス界の常識と相対した時には、それは今やむしろ悪徳の根源にもなりうる厄介な存在ではないのか、との危機意識をもった対処が必要なのもしれません。筆者も含め、昭和を知る経営者世代は、そんな自戒の念を抱きつつ、ジャニーズの一件を受け止める必要がありそうです。(大関暁夫)