政府・日銀の「為替介入」ある? 日本株急騰の影で始まる市場との攻防...エコノミストが指摘「第1ラウンドは1ドル=141円、カギを握る植田日銀総裁」

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植田総裁の消極姿勢を見透かし、外国人投資家が日本買いに走った

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日本銀行の植田和男総裁(日本銀行動画チャンネルより)

   さて、その日本銀行の政策姿勢が、現在の「株高」と「円安」を同時に招いている、と独自のデータ分析から指摘するのが、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。

   熊野氏はリポート「株価3万円に隠れた日銀政策と円安効果~まだ好循環は織り込まれず~」(5月31日付)のなかで、日本株急上昇の要因となっている外国人投資家の日本株買いは、「植田和男日本銀行総裁の政策姿勢の変化が如実に反映している」ことを実証したとする。

   「なぜ、ここにきて日本株の購入を増やしたのか?」という理由を考えると、巷間、「日本への成長期待」が話題になるが、実は、植田総裁の政策姿勢が生み出した「円安効果」のほうが大きいという。

   熊野氏は、財務省の証券投資データから外国人投資家の動きを、2月から5月にかけて1週間単位で分析した【図表3】。すると、次のことが明らかになった。

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(図表3)外国人投資家の日本株式の売買動向(第一生命経済研究所の作成)
「8週連続の買い越しの前に、5週間連続の売り越しがあったことがわかる。2月19日~3月25日は、何とマイナス4.2兆円の売り越しだった。それが裏返るように、3月26日~5月20日はプラス7.1兆円の買い越しになった【再び図表3】」
「この資金フローは、日銀の政策評価と連動したものだと推察される。2月10日に植田総裁の名前が(メディアに)浮上した直後から、金融市場では日銀が金利正常化に動くとの観測が高まった。そのタイミングでは、外国人投資家が日本株を売っていた」
「その後、3月上旬に米銀不安が起こると、植田総裁はみるみる消極的に変わった。それを見透かしたかのように、外国人投資家は3月末から日本株を買い戻す。4月末の決定会合で、マイナス金利解消に向けた利上げも、長期金利変動幅の上限引き上げもはるかに遠のき、一気に安心感が広がった【再び図表3】」
「外国人投資家は、5週連続の売りから8週連続の買いに転じる。株価3万円の隠れた立役者が日銀だったことがわかる」

   熊野氏は、もう1つ、外国人投資家にとって大きい「円安効果」をこう指摘する。

「筆者(=熊野英生氏)は、成長期待よりも、円安効果が大きいのではないかと考える。株価は、日銀の金融緩和とその派生的効果である円安によってかさ上げされているという見方だ」

   熊野氏が、日銀の「資金循環勘定」で、外貨資産残高の推移を調べると、過去10年間で企業の総資産に占める外貨残高の割合が巨大化していた【図表4】。

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(図表4)企業の総資産に占める外貨残高の割合(第一生命経済研究所の作成)
「2012年末91.8兆円から2022年12月末228.8兆円と2.6倍に増えた。事業法人のバランスシートの約18%が外貨資産である。円安が10%進めば、計算上では企業資産はプラス23兆円も増えることになる」
「2022年3月くらいから円安が急激に進んで、現在まで外貨資産残高の評価額を膨らませている。おそらく、外貨資産から得られるフローの外貨の円評価額も大きくなっているはずだ。これは見かけ上だと言ってしまえばそれまでだが、企業の資産残高の数字を押し上げる効果を持っている」
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ドル円相場はどう動く?(写真はイメージ)

   さて、今後の株価動向はどうなるのだろうか。

「まだ、マクロの好循環が株価を押し上げる展開にはなっていないが、もしも4月以降の消費データが上向きになり、賃金データでも春闘の上向き流れが確認できると、今度は失われた期待感が再浮上してくるだろう。目先、発表される4~6月の消費・賃金データが大幅に伸びれば、好循環が働き始めたことが裏付けられる」
「日本証券業協会によると、個人投資家の人数は2021年度末で1457万人とされる。人口の11.6%である。この人数の個人投資家は、株価3万円台では含み損を抱えている人はほとんどいないはずだ。株価上昇は、自己実現的に消費拡大⇒好循環⇒株価上昇への連鎖していく可能性もあり得る。実体経済の変化には今まで以上に注目が集まるだろう」

(福田和郎)

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