政府・日銀の「為替介入」ある? 日本株急騰の影で始まる市場との攻防...エコノミストが指摘「第1ラウンドは1ドル=141円、カギを握る植田日銀総裁」

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

円安に対する国民の反応が、昨年と違う2つの理由

kaisha_20230602192116.jpg
日本銀行本店

   一方、「政府・日銀の為替介入のポイントが近づいているのに、市場には強い警戒感がまだ見られない」と指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏は、リポート「悪い円安論は再び高まるか」(5月31日付)のなかで、その理由をこう説明する。

「昨年、財務省に為替介入の実施を促したのは、円安進行が物価高を加速し、生活を圧迫することを懸念する世論の高まりだった。円安進行が物価を押し上げ、生活を圧迫する姿は今も変わらない。しかし、円安に対する国民の反応が、昨年とは異なるのはなぜだろうか? その理由は大きく2つあると考えられる」
「第1(の理由)は、今年の春闘で賃金上昇率が上振れたことで、物価高による実質所得悪化への懸念が緩和されたことだ。第2(の理由)は、円安と並行して株価が上昇していることから、円安がもたらす経済への悪影響が意識されづらくなっていることだ」

   しかし、木内氏は、コア消費者物価指数(除く生鮮食品)の予測グラフ【図表2】を示しながら、今後も物価上昇が続くため、実質賃金上昇率が前年比でプラスに転じるのは、早くて来年(2024年)年初になると説明。それまでに、国民はしびれを切らして、円安による物価高への不満が再び高まるのでは、と指摘する。

kaisha_20230602192149.png
(図表2)コア消費者物価指数の見通し(野村総合研究所の作成)

   第2の理由である、日本株が急上昇している点については、昨年の急速な円安局面では日本株が横ばいだったため、現在は、円安の好影響が日本株にストレートに表れていると認める。しかし、こう反論するのだ。

「日本で株価上昇の恩恵を強く受けるのは、富裕層に偏っている。他方、円安による物価高で生活が圧迫されるのは、中間層あるいは低所得者層である。このことから、円安株高の進行は『格差』を拡大させるとの批判が、早晩高まっていくのではないか」

   今後はどうなるのか。

「円安がさらに進んでいけば、『悪い円安論』が国民の間で再び高まることになるだろう。それは、足元での円安進行の最大の要因である、植田和男日銀の金融緩和継続の姿勢に対する批判にも発展していく可能性がある」
「それを受けて、イールドカーブ・コントロール(YCC)見直しなど、日本銀行の政策修正への期待も高まるのではないか。昨年と同様の展開である。しかし、円安進行による物価上昇率の上振れは、一時的なコストアップ要因であることから、日本銀行はそれを理由に政策を修正することには慎重だろう」
「結局、次回6月あるいは7月の金融政策決定会合での政策修正への期待が裏切られ、それがもう一段の円安進行のきっかけとなることも考えられる。その結果、ドル円レートは140円台半ば程度まで進む可能性があるのではないか」

   しかし、今年後半には大逆転が待っているという。米国の景気後退だ。

「その場合には、米国での金融緩和観測が浮上するだろう。日米金利差縮小観測と米国・世界経済や金融情勢の不安定化を受けたリスク回避の円高傾向が重なる形で、日本銀行が目立った政策修正を見送るなかでも、今年年末には1ドル120円台まで円が買い戻される可能性を見ておきたい」
姉妹サイト