昨年同様、1ドル=141円のタイミングで攻防が始まった
こうした政府・日銀VS市場の動きをエコノミストはどう見ているのか。
「昨年同様、1ドル=141円台に乗るタイミングで攻防が始まった」とみるのは、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。
市川氏はリポート「財務省・金融庁・日銀の3者会合で円安は一服か」(5月31日付)のなかで、昨年6月以来のドル円相場の動きと、3者会合の開催日、さらに3回にわたる介入が行われた日付を重ね合わせたグラフを示した【図表1】。
これを見ると、ドル円相場をめぐる政府・日銀VS市場の攻防のあとがよくわかる。会合が行われた、と報道されただけでも、円高に大きく振れるのだ。
市川氏はこう指摘する。
「政府・日銀には3者会合開催によって為替市場の投機的な動きをけん制する狙いがあると考えられます。実際、2022年の動きを振り返ると、3月以降に急速なドル高・円安が進行したことを受け、6月10日に3者会合が行われ、会合後に初めて(為替相場の急激な変動は望ましくない、とする)声明文が公表されました」
ただ、その後もドル高・円安が続いたため、9月8日に再び3者会合を開催。9月14日に日本銀行が為替介入の実施直前で行われる「レートチェック」を行なった。これは、金融機関の為替担当者に為替相場の水準を聞くことだ。
「その後、政府・日銀が9月22日に約2.8兆円、10月21日約5.6兆円、10月24日に約0.7兆円のドル売り・円買い介入を実施すると、ドル円は10月21日に一時1ドル=151円95銭水準をつけた後、ドル安・円高に転じました【再び図表1】」
こうした動きを振り返ると、1ドル141円の大台に乗るタイミングで、「レートチェック」の実施、3者会合を行なっていることがわかる。今回もまさに141円台をつけるタイミングだった。
いよいよ、政府・日銀VS市場の本格的攻防が始まるようだが、ドル高・円安の動きは今後どうなるのか。市川氏はこう結んでいる。
「市場では6月13日、14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加利上げの見方も強まっており、政府・日銀はドル高・円安が加速する展開も想定したと考えられます。なお、ドル円がこの先、再び140円台を回復した場合でも、今回の3者会合開催を受け、ドル高・円安の進行は緩やかになることも想定されます。4~6月期に145円までのドル高・円安を見込んでいますが、年内はこの水準がピークと予想しています」