建設業や運送業の2024年問題が話題になっているが、当事者の人たちはメリット・デメリットをどう見ているのだろう?
保険の診断・一括比較・見積もりサイト「コのほけん!」を運営するSasuke Financial Lab(東京都千代田区)は2023年5月30日に「2024年問題に対するトラックドライバーの本音調査」を発表した。
調査によると、トラックドライバーたちは長時間労働の是正や労働条件の改善が2024年問題の一端として起きるメリットに期待しながら、手取りの減少や人手不足への影響などをデメリットとして考えているようだ。
働き方改革関連法の実施まで1年を切る中、運送業界の対応が求められている。
当事者の考える2024年問題のメリット「時間外労働の是正」57.5%、「業務効率の改善」31.1%、「メリットはない」26.4%
この調査は、2023年5月15日から3日間で、トラックドライバー106人を対象に、インターネットリサーチで調べた。
背景には、2024年4月から働き方改革関連法が施行されることがある。ドライバーの時間外労働の上限が月平均80時間に制限されることを受け、今回の調査ではトラックドライバーを対象に、「働き方改革関連法の施行」と「2024年問題」に関する意識調査を行ったものとなる。
はじめに、トラックドライバーが考える働き方改革のメリットを聞くと、最多は「長時間労働/時間外労働の是正」で「57.5%」とそれ以下を突き放したかたちだ。
次いで、「賃金や労働時間などの労働条件が改善」が「32.1%」、「業務効率を見直すきっかけとなる」が「31.1%」と並び、「正社員ドライバーと非正規ドライバーの格差是正」が「18.9%」と続いた。
トラックドライバーの正規と非正規の格差是正とは、ドライバーの「同一労働同一賃金」の問題のことだ。多くのトラックドライバーが非正規雇用で働いている現状で、施行後には給与体系や評価基準について待遇差が生じないよう合理的なルール作りが必要になることが指摘されている。
続いて、デメリットについて聞いてみると、「労働時間が減ることに伴う手取り収入の減少」が「75.5%」でトップになった。つぎに、「人手不足に拍車がかかる」が「67.9%」。インターネットショッピングが増えて、輸送量が増えている現代においては、ひっ迫した問題になる。
以下、「荷主企業に対して値上げ交渉が必要になる」(43.4%)、「物流業界全体の売上・利益が減る」(37.7%)、「サービス低下につながる」(37.7%)の順となった。
次の質問では、2024年問題をきっかけに転職を考えたかを聞いた。「かなり検討した」(9%)、「少し検討した」(24%)を合わせた「33%」が転職について考え、「あまり検討しなかった」(26%)、「まったく検討しなかった」(29%)を合わせた「55%」の人は考えなかったと答えた。
さらに、転職の理由について聞いてみると、「収入が減ることへの危惧」(79.4%)がトップで、以下を引き離した。続いて、「業界・会社の先行きが不安」(50.0%)、「人手不足で結局は自分に負担がのしかかりそう」(44.1%)、「肉体的または、精神的につらい」(41.2%)という順位になった。
物流当事者の転職や働き方を見直した人49.0% 具体的には「肉体への負担」「手取り減に伴う家計の見直し」「理想の働き方」
引き続き、2024年問題は働き方やライフプランを見直すきっかけになったかを聞くと、「非常にそう思う」が「11%」、「ややそう思う」が「38%」となり、「49%」のドライバーが仕事と人生を見つめなおしたという。
また、具体的にどんなことを考えたか質問すると、「労働に伴う体への負担を考えた」(53.8%)、「収入減少に伴う家計の見直し」(51.9%)、「自身の理想の働き方を考えた」(42.3)と答えた。
同社では以下のように調査をまとめている。
「『働き方改革関連法の施行』と『2024年問題』に関して、トラックドライバーは、長時間労働の是正や労働条件の改善、業務効率の見直しといったポジティブな影響を期待する一方で、労働時間の短縮に伴う収入の減少や人手不足、荷主企業との値上げ交渉などのネガティブな影響も懸念していることが分かりました。
また、今回の調査では、トラックドライバーにとって、『働き方改革関連法の施行』や『2024年問題』は、メリットとデメリット、両方の影響を受けるものとして認識されており、働き方やライフプランの見直しを促す重要なきっかけとなっている」