経済指標の公表も不透明で、実態と数字の間の乖離?
中国は世界経済の期待の星だったが、「今や重石になるなど不安の種になっている」と懸念を示すのは、第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏だ。
西濵氏はリポート「世界経済は中国の景気減速を意識する必要がある、かもしれない~中国経済にはデフレ懸念も含めた正しい現状認識に基づく対応策が必要になっている~」(5月31日付)のなかで、製造業PMIの推移のグラフ【図表1】を示したうえで、こう述べる。
「今年の中国経済はゼロコロナ終了によりスタートダッシュを切ったが、足下では早くも息切れの様相を強めている。内需の弱さはディスインフレ懸念に繋がってきたが、商品市況の調整も重なりデフレ基調を強める」
中国経済がデフレ傾向に陥る可能性も示唆したかたちだ。
その背景として、主に6つの理由をあげている。
(1)米中摩擦とそれに伴うサプライチェーンの再構築の動きが、中国経済の足かせになっている。
(2)ウクライナ情勢悪化による中国とロシアの接近を受けて、欧米の間で「中国離れ」の動きが出て、外需に悪影響を与えている。
(3)物流関係で人出不足が深刻になっている。
(4)地方で不動産不況が続き、家計部門に資産デフレが起こっている。
(5)さらに、オミクロン株派生型「XBB株」が拡大しているのに、ゼロコロナ終了を受けて検査数が減少、感染実態が不透明になり、国民の間で疑心暗鬼が広がっている。
(6)そのうえ、経済指標の公表も不透明で、実態と数字の間の乖離(かいり)がある可能性もあり、当局の景気認識には実態とのズレが懸念される。
――といった案配で、西濱氏はこう結んでいる。
「当面の中国経済には、一段の下振れを意識する必要性があると考えられる」