日本人の「ChatGPT愛」は世界トップクラス? 調査で判明...米国・インドを上回る利用熱 課題は「AIと話すほうが、人間と話すより楽しい」人たち?

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   いまや、ニュースで名前を見ない日がなくなった対話型生成AI(人工知能)の「ChatGPT」(チャットGPT)。

   シンクタンク「野村総合研究所」(東京都千代田区)が2023年5月26日に発表した「日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点)調査」によると、日本人の「ChatGPT愛」は世界トップクラスかもしれないという。

   いったいどういうことか。

  • パソコンで仕事をする女性(写真はイメージ)
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「ChatGPT」浸透の猛スピードは、新型コロナワクチンに匹敵

   米国「OpenAI」(オープンアイ)社が2022年11月30日に公開した「ChatGPT」は、猛スピードで世界中に広がり、4日後の12月4日には利用者が世界で100万人を超え、2か月後の2023年1月には1億人を突破したといわれる。

   野村総合研究所の調査によると、これまでの主要SNSを見ても、ユーザー数1億人に到達したのは「TikTok」で9か月、「インスタグラム」で2年4か月かかっているから、「ChatGPT」の猛スピードぶりがわかる。

   ちなみに、「ChatGPT」並みの猛スピードで世界に広まったものに、新型コロナワクチンがある。同ワクチンの接種回数は、ワクチンが登場した2020年12月からやはり2か月後の2021年1月末に延べ1億回に達した。

   「ChatGPT」の日本での利用状況はどうなっているのか。

   ウェブサイトへのアクセス状況を可視化するサービスを提供している「Similarweb」(シミラーウェブ)によると、「ChatGPT」を提供する「Openai.com」(オープンアイ・コム)への日本からのアクセスは、2023年2月頃から1日に100万回を超えはじめ、4月14日に746万回のピークを迎えた。その後は4月末まで横ばい傾向だ【図表1】。

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(図表1)オープンアイ・コムへの日本からのアクセス数推移(野村総合研究所の作成)

   また、【図表1】のグラフを見ると分かるが、土日のアクセス数が急減することも特徴の1つだ。まだ「ChatGPT」は、休日に何かを聞くような存在ではなく、平日の仕事や勉強などで使われることが大半のようだ。

   「Openai.com」への国別トラフィックシェア(ユーザーがウェブサイトを訪問した回数のシェア)を見ると、1位米国(10.6%)、2位インド(9.0%)に次いで日本は3位(6.6%)に入った【図表2】。

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(図表2)オープンアイ・コムの国別トラフィックシェア(野村総合研究所の作成)

   しかし、人口規模を考えれば、日本(総人口約1億3000万人)は、米国(約3億3000万人)、インド(約14億1000万人)に比べると、国民1人あたりの利用度合いは高いと言える。

   また、日本から同サイトへのアクセスの平均滞在時間は8分56秒で、米国の6分50秒、インドの6分27秒よりもだいぶ長い。これをみても、日本人の関心の高さがうかがえる。

一度でも利用すると、9割がずっと使い続けたくなる

   さらに、野村総合研究所が15歳~69歳の男女3204人を対象に、4月15日・16日時点で、「ChatGPTを知っているか、また使ったことがあるか」を聞くと、「知っている」と答えた人は61.3%、「実際に利用したことがある」と答えた人は12.1%だった【図表3】。

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(図表3)ChatGPTの性別年齢別認知・利用率(野村総合研究所の作成)

   性別では、特に男性の比率が高く、認知率では70.9%(男性)対50.9%(女性)だった。利用率でも、17.7%(男性)対6.2%(女性)と大きな差がみられた。年齢別にみると、10代~30代の男性の利用率が20%を超えて最も高い。女性は20代(13.2%)が唯一、10%以上の利用率だった【再び図表3】。

   どういう人々の利用率が高いのだろうか。利用経験者に「職業」を聞くと、学生(21.6%)と教職員(20.5%)の利用率が20%を超えて最も高く、教育関係者の利用が高いことがわかる【図表4】。

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(図表4)職業別に見たChatGPT利用率(野村総合研究所の作成)

   世界中の大学が学生の「ChatGPT」利用についてガイドラインを作成していて、レポート作成時などの利用を禁止する大学も出てきている。

   たとえば、上智大学では今年3月、教員の許可なく生成AIが作成した文章や計算結果をレポート作成に使うことを禁じ、違反が確認された場合は、大学の「不正行為に関する処分規定」にのっとり、厳罰に処すという通達を学内外に発表している。

   また、今年2月、英国のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学でも、ともに評価につながるレポート作成などで生成AI使用を禁じる通達を発表している。教育現場では生成AIとの付き合い方が喫緊の課題となっているのだ。

   再び、調査に戻ると、教育関係者の次に利用率が高いのが会社役員(17.2%)、会社員(16.7%)、そして自営業(14.5%)が続く【図表4】。企業の場合は、生成AI利用による機密漏洩への懸念が強く、利用ガイダンスを各企業が策定している段階だ。

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AI時代をどう生きるか(写真はイメージ)

   医師・医療関係者も5.3%と低かった。人命と向き合う医療関係者からすれば、「ChatGPT」の回答内容の正確性に疑問があるなか、業務の一環として使う余地はまだかなり小さいということだろう。

   「今後の利用意向」について聞くと、実際に「ChatGPT」を使ったことがある人の約9割(88.7%)が「継続して利用したい」と答えた。一度でも利用すると、多くの人が続けて利用したくなるようだ。

   回答者のコメントを見ると、「面白い」「仕事が効率化できる」「生活が豊かになりそう」といった意見に加えて、「ウェブ言語の知識がなくても、ウェブページを作ることができた」「人に質問しづらいことがあっても、AIには質問しやすい」といった具体的なメリットをあげる人が多かった。

   一方、「利用したことはあるが、今後は利用しない」と答えた人(11.3%)が挙げた理由には、「思考が停止する」「使うのが難しかった」「怖い」といったコメントがみられた。

「人に質問しづらいことでも、AIには質問しやすい」

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ChatGPTに一番好意的なのは日本人?(写真はイメージ)

   今回の調査結果について、野村総合研究所ではこうコメントしている。

「ChatGPTを今後も利用したいという回答者のコメントを見ると、『人に質問しづらいことがあってもAIには質問しやすい』といった具体的な体験やメリットを指摘するコメントも見られた。
ただし、『AIと話すのは、人間と話しているより楽しい』といったものもあり、生成AIの更なる進化によって、人間同士のコミュニケーションの希薄化や、『AIとしか話さない人間』が増えていくような未来像も垣間見ることができた。しかし、日本語をそれなりの質の高さで話すChatGPTの登場によって、日本人とAIの距離が一気に近くなったことは間違いない。
フランスのグローバル規模の市場調査会社『IPSOS社』(イプソス)が2022年1月に発表したAI関連調査によると、『私は、AIが何かについてよく理解している』という質問に、『はい』と回答した人の比率が、日本は調査対象28か国中最も低かった(41%)。
しかし、ChatGPTの登場によって、日本人がAIを実際に使う機会が格段に増えたため、『習うより、慣れろ』の精神で、日本人のAI理解度も大きく高まっているのではないか」

   調査は、2023年4月15日~16日、関東1都6県に住む15歳~69歳の男女3204人にインターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)

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