国内の金価格が過去最高値に
「週刊エコノミスト」(2023年6月6日号)の特集は、「上がる金&揺らぐドル」。史上最高高値圏で推移するドル建ての金価格。その背景を探ると、基軸通貨ドルを巡る変化があるという。
金の国内価格が高騰している。国内地金商最大手の田中貴金属工業が販売する金の小売価格は5月10日時点で、1グラム当たり9794円と過去最高値を付けた。日本取引所グループ(JPX)の大阪取引所で取引される金の先物価格も4月下旬以降、連日のように最高値の更新を続けているという。
世界的に金価格は高値圏にある。国際的な指標価格である米ニューヨーク金先物は5月4日、一時1トロイオンス=2085.4ドルを付けた。20年8月7日の史上最高値2089.2ドルまであと一息だった。
なぜ今、世界的に金価格が上昇しているのか。
背景として、昨春からある「異変」が起きているという。金価格は長く、米実質金利と逆相関していたが、その関係が崩れたというのだ。つまり、金利が上昇すると、金価格も上がり始めたという。
その理由の1つとして、中国、ロシアなどの中央銀行による金買いを挙げている。
きっかけになったのが、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けた西側諸国の対露経済制裁だ。ドルへの過度な依存を避けたいという国がじわりと動き出し、それが金価格の上昇として表れているという。
◆金への投資の仕方とは?
金に投資する方法も説明している。主に現物、ETF(上場投資信託)、投資信託がある。
金現物の場合は盗難リスクもあるので、貴金属商などに保管してもらうこともできるが、保管料がかかる。毎月一定額で現物を購入して積み立てる「純金積立」という方法もある。
ETFは株式と同じように売買できる。東証には現在、5本の金ETFが上場しており、ロンドンの金地金価格など対象指標を設定して、その指標と連動するように運用されている。
さらに、金価格に連動する成果を目指す投資信託も販売されている。ETFや投資信託は小口で投資可能なうえ、投資信託は積み立て投資にも向いている。
短期的な投資ではなく、ポートフォリオの一部として、金融商品のヘッジ手段として、金を組み込んでおくことを勧めている。
このほか、基軸通貨ドルの未来を論じ、「日本が人民元決済を迫られる日が来るかもしれない」という中北徹・東洋大学名誉教授のリポートなど、人民元取引が広がり始めたことを示す記事に注目した。(渡辺淳悦)