金融事業は「中核事業」だったが...「金融とITの融合」の目的では3年前とは状況が変化
今回、3年前の方針を転換したことについて、十時裕樹社長兼最高財務責任者(CFO)は5月28日の説明会で、「2020年のものは『親子上場の解消』が目的であり、ガバナンスと経営力の強化が目的だった。その目的が果たされたので、別の考え方も出てくる」と説明。
くわえて、「さらに中長期的な成長、拡大を志向していくには、これまでとは違う次元の投資が必要になってくる。(金融と)エンタメ・半導体の投資を両立することは容易ではない」と強調した。
収益面では、金融事業の23年3月期の営業利益は2239億円と、ソニーGの連結全体の2割弱を占める。ウェートとしては堂々たる「中核事業」だ。
一方、シナジーについては、スタンスが変わってきていた。
2023年4月、ソニーG本体にあった研究開発機能の大部分を各事業会社に移管するなど、それぞれの事業が頑張って稼ぐということだ。
これは、各事業の競争力を磨くために、限られた資金をどう生かすか、ということでもある。実際に、エンタメと、CMOSイメージセンサーを中心にした半導体事業に、2018~22年度に、それぞれ1兆円以上を投じてきた。
他方、金融事業もITシステムなどに継続的に投資しなければならないし、財務健全性も求められる。そこで、分離・上場して独自に資金調達し、財務基盤を強めて成長を目指すのが合理的と判断したということだ。