水素は「マイナス253度」で効率よく輸送できる
JSEと歩みをともにする川崎重工グループでは、2030年に目指す将来像として、グループビジョン2030 「次の社会へ、信頼のこたえを ~Trustworthy Solutions for the Future~」を制定。将来ビジョンを宣言している。
同社は、今後注力するフィールドを「安全安心リモート社会」、「近未来モビリティ」、「エネルギー・環境ソリューション」とし、変化に合わせてより成長できる事業体制への変革を目指している。 「Kawasaki Hydrogen Road」では、水素を「つくる」、「はこぶ・ためる」、「つかう」に分け、「はこぶ・ためる」の部分で、こう説明している。
「水素はマイナス253度の極低温にすることで、気体(GH2)から液体(LH2)に変わり、体積が800分の1に減少。液化水素による水素の輸送は、数ある方法の中で極めて効率がよく、すでに実用化された技術です」
そこには長年、マイナス162度になる液化天然ガス(LNG)の運搬船、受入基地や極低温の液化水素の貯槽を世に送り出してきた「Kawasaki」の実績が活かされていると、液体水素への取り組みと液化水素の運搬船の必要性を紹介している。
会社四季報の最新銘柄レポート(2023年5月17日号)によると、「川崎重工業」のPBR(株価純資産倍率)は0.80倍(重工業界の平均は1.13倍)と、東京証券取引所が求めている「PBR1倍」を下回っている。
東証は、2023年3月、上場企業の企業価値を高める基盤をつくることを目的に、PBRが低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するよう要請。その目安を「1倍」とした。
一般に、PBRが「1倍」を下回る場合、その企業の価値よりも安い値段で株式を買えることになるので、「割安である」と考えることができる。川崎重工も、これに当たる。
そんな同社の事業構成は、モーターサイクルが30%、航空宇宙20%、エネルギーマリンが20%、精密ロボット17%に加えて車両が8%とバランスがとれている。
航空機部門では今期以降にボーイング787の増産が期待でき、強化中の産業用ロボットでは手術支援など医療分野にも進出。エネルギーマリンでは、今後の水素利用拡大に伴う、液化水素の大型運搬船の売り上げ貢献も期待できる。
5月10日の決算発表を受けて、同社の株価は終値で110円安の2784円だった。減益や減配見通しを嫌気した結果だ。5月10日から13日までの3日間で231円の下落となったが、中長期的に企業業績は問題ないとみているので、安値での買いを考えている。
川崎重工の株価の推移を10年の長期チャートでみると、「2000円~2500円」が、買い値としては妥当と考えているので、まずは年初来安値の2671円あたりからのナンピン買いでスタートできればと考えている。(石井治彦)
【川崎重工業(7012)】
年初来高値 2023年5月29日●3200円
年初来安値 2023年3月16日●2671円
直近 終値 2023年5月29日●3135円