「隠れ育休」などの改正育児・介護法の趣旨違反は55% 異次元の少子化対策よりも前にやるべきこととは?

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育休取得で上司の評価が「低下した」人は1割程度

   調査では、「妻の出産後に、妻のサポートや育児を目的として育児休業制度、または有給休暇や特別休暇(出産休暇など)を取得したことがある」と答えた人(n=659)に、育休の取得前と後では、どのような変化がありましたか(項目から選択)と聞いた。

   その結果、「残業時間削減に対する意識」(56.7%)や「業務効率化に対する意識」(58.4%)が6割程度、「自分自身の仕事へのモチベーション」(48.5%)、「職場の他の人への理解」(54.2%)は5割程度が「非常に向上した」または「向上した」と回答。

   「職場における上司からの評価」(12.2%)、「同僚からの評価」(8.4%)は、「低下した」「非常に低下した」と答えた人は1割程度だった。

   「家事に対する意識」(66%)、「育児に対する意識」(73.2%)、「子どもとの絆」(76.4%)、「今後の家族のライフプランに対する意識」(69.8%)などの「家族に対する意識」は7割前後が「非常に向上した」「向上した」と答えている。

   こうしたことから、育休や隠れ育休の取得は、取得前よりネガティブな要因はほとんどみられず、むしろライフ、仕事、家族への意識を向上させることが示唆された。【図2参照】

図2 「育休の取得前と後では、どのような変化がありましたか?」(ファザーリング・ジャパンが作成)
図2 「育休の取得前と後では、どのような変化がありましたか?」(ファザーリング・ジャパンが作成)

   次いで、「会社に妊娠・出産を初めて報告したのはいつか」を聞いた。

   改正育児・介護休業法では、従業員からの妊娠出産の申し出があって、初めて企業の個別周知と意向確認の義務が発生する。

   そこで、昨年4月以降に子どもが生まれた男性が、配偶者の妊娠出産の報告時期について聞いたところ、出産予定日の6か月前までに会社に報告した人が「出産予定日の6か月よりも前」と答えた人が31.5%と最も多かった。

   「出産予定日の6か月前」が15.9%、「出産予定日の5か月前」10.6%、「出産予定日の4か月前」9.2%など、80%の人が3か月以上前から妊娠出産の申し出ていることが明らかになった。【図3参照】

図3 会社に妊娠・出産を初めて報告した時期(妊娠と出産どちらか報告の早かった日で回答。ファザーリング・ジャパンが作成)
図3 会社に妊娠・出産を初めて報告した時期(妊娠と出産どちらか報告の早かった日で回答。ファザーリング・ジャパンが作成)

   改正育児・介護休業法の趣旨に準拠した対応をされていない人は55.1%いる

   また、「会社に妊娠・出産を報告した後、会社から育休制度の周知・育休取得の意向の確認はされましたか? もしくは自分からしましたか? 説明があった場合は誰から(どのように)されましたか?」に、あてはまるものをすべて選ぶよう聞いた(n=865)。

   結果は、「自分から育休等の孫精を出すまで、会社からは何の動きもなかった」と答えた人が13%、「会社から確認されておらず、自分からも確認していない」人が34%を占めた。

   その結果、会社に申し出ても、改正育児・介護休業法の趣旨に準拠した対応をされていない人が55.1%いることがわかった。【図4参照】

図4 改正育児・介護休業法の趣旨に準拠した対応をされていない人は55.1%いる(ファザーリング・ジャパンが作成)
図4 改正育児・介護休業法の趣旨に準拠した対応をされていない人は55.1%いる(ファザーリング・ジャパンが作成)

   さらに、「取るだけ育休」が指摘されるなか、「育休取得の推進と両親学級の受講」はセットで推進する必要があるため、男性に「妻が妊娠中から出産までに、あなたは両親学級(父親学級・母親学級含む)を受講しましたか?」と聞いた。

   それによると、「自治体で開催されている両親学級を受講した」と答えた人は20.3%、「病院で開催されている両親学級を受講した」人は11.0%、「職場で開催されている両親学級を受講した」人も6.1%いた。しかし、何かしらの両親学級を一つも「受講していない」人が63.8%いることもわかった。

   両親学級を受講していない男性が6割いる一方、受講率の向上のため、母子手帳などへの記載のみならず、育休給付金や児童手当の申請手続きに両親学級を受講条件にするなどの工夫が不可欠であると、ファザーリング・ジャパンはみている。

   また、育児休業制度を利用する場合、利用しやすい条件・環境だと思うもの(「隠れ育休」は除く。N=1030、複数回答)を聞くと、60%が「上司が必ず『育休はいつ取る?』と確認し、取得できる環境を整えてくれる」と答え、最も多かった。

   次いで、「人事部(会社)が必ず『育休はいつ取る?』と確認し、取得できる環境を整えてくれる」(36%)や「同じ部署、または、関連部署に育児休業を取得した男性がいる」 (37%)も高い数値となっており、改正育児・介護休業法で企業に求められている雇用環境を整備することの重要性が明らかになった。【図5参照】

図5 育児休業制度を利用しやすい条件・環境について聞くと......(ファザーリング・ジャパンが作成)
図5 育児休業制度を利用しやすい条件・環境について聞くと......(ファザーリング・ジャパンが作成)
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