ウィズコロナ、アフターコロナの時代になっても、消費水準がコロナ禍前に戻らない要因に、日本人特有の「不安」があるといわれる。
そんななか、「物価が上昇する」など、「お金に感して漠然と」不安を感じている人が8割を超えることが、矢野経済研究所(東京都中野区)の調べでわかった。
コロナ禍後の消費者の行動特性と意識の変容に関するアンケート調査を、2023年5月26日に発表した。
調査は、消費や経済に関する主要10項目について不安に感じる程度、3000円未満のレジャー・サービスを利用する際に重視する決定要素が新型コロナウイルスの感染拡大前と現在でどう変わったかについて調査。また、消費抑制の要因となっている「不安の正体」を明らかにした。
「物価が上昇する」不安は9割近く
調査では、消費や経済面に関する主要10項目について、それぞれどの程度「不安」なのかを聞いた。
不安の度合いが大きかったのは「物価が上昇する」との答えで、「とても不安」と答え人が54.0%、「やや不安」の33.1%と合わせて87.1%が「不安」と評価している。
その他、不安の度合いが大きかったのは「老後資金・年金」で、「とても不安」と答えた人が49.9%、「やや不安」が33.0%で合わせて82.9%が「不安」と答えた。
また、「貯金が増えない」ことが「不安」な人は82.1%(「とても不安」の42.4%と「やや不安」の39.7%の合計)、「収入が増えない・減る」と答えた人は80.5%(「とても不安」の40.6%と「やや不安」の39.9%の合計)となった。【図1参照】
注目すべき点は、「お金に関して漠然と」不安を感じている人がとても多いことだ。
「とても不安」と答えた人は40.0%、「やや不安」が42.3%で、合わせて82.3%が「不安」に感じている。
「物理的に生活を圧迫しつつある物価上昇や、目に見える貯金や収入の不安、さらには老後資金の不安などは因果関係がはっきりしており、わかりやすい不安である。
しかし、『お金に関して漠然と』はっきりしない不安を感じている人が80%を超えていることで、心の根底に『不安』を持つ人が圧倒的に多いということがうかがえる。矢野経済研究所は
「この『漠然』とした不安が、消費を抑制する、見えない圧力となっている」
と、推察している。
最も重要度の高い決定要素は「自分の興味・関心に合う」
また、調査では1回1人当たり3000円未満のレジャー・サービス(たとえば、外食や映画、カラオケ、ショッピングなど)を利用する際の決定要素を12項目あげて、それぞれの重要度について、10点満点の評価で回答を得た。
現在(調査時点=2023年3月)の評価とともに、コロナ禍前(2019年末~20年3月頃)の時点での評価を思い出してもらい、10点満点で評価を聞いた。
12項目の決定要素の中で、現在で最も重要度の高いものは「自分の興味・関心に合う(平均7.16点)」だった。次いで、「コスパが良い・価格に納得できる」(7.04点)、「サービス・商品の内容が良い」(6.94点)、「安全性が高い(疫病対策、事故対策、衛生管理等)」(6.56点)、「場所が便利である」(6.48点)と続いた。
一方、コロナ禍前の評価で最も重要性の高いものは、「自分の興味・関心に合う」(7.04点)だった。次いで、「サービス・商品の内容が良い」と「コスパが良い・価格に納得できる」が6.93点の同点で続いた。
現在の重要度(10段階の平均値)をY軸に示し、コロナ禍前の時点での重要度(同)と現在の重要度(同)の差分をX軸に示して、散布図を作成した。【図2参照】
重要度が大きく増加した決定要素は「安全性が高い(疾病対策、事故対策、衛生管理等)」、次に「1人で利用しやすい」ことであった。
一方で、わずかではあるが重要度が下がった決定要素に、「ストレス発散・癒しになる」「日常とは違う経験・感動を得る」があげられる。
矢野経済研究所は、
「レジャー用途としてのストレス発散や日常とは違う経験といった項目は、従来、レジャーを提供するベンダーにとってはサービスの付加価値をあげる重要な要素であったが、コロナ禍を経て、それらの価値が下がった調査結果となったことは注目に値する」
としている。
なお、調査は2023年3月に、全国の20~69歳の男女1000人のインターネットモニターを対象に、消費者アンケート調査、ならびに文献調査を併用して実施した。