新型コロナウイルスの感染拡大は雇用の悪化を引き起こし、新卒の就職率も大幅に悪化した。2023年3月卒業者の就職率は、どの程度改善したのだろうか。厚生労働省と文部科学省の4月1日現在の就職状況調査をもとに、大学生と女子短大生の就職状況を取り上げたい。
とくに短期大学生(女子)は、コロナ後の改善スピードが緩やか
調査は大学62校、短期大学20校に対して行われた。大学生の2023年3月卒業者の就職率は97.3%と前年よりも1.5ポイント改善した。ただ、新型コロナの影響が出る前の2018年卒は98.0%、2019年卒は97.6%だったことから、新型コロナ前の水準にまで回復はしていない。
新型コロナが感染拡大し、就職にも影響が出始めた2020年卒の就職率は98.0%と、高水準を保ったものの、2021年卒は急激に悪化して96.0%に、2022年卒は95.8%に低下した。2020年卒と比較すると2.9ポイントも悪化した。(グラフ1)
大学生の男女別就職率を見ると、男子大学生の就職率により大きな影響が出ていたことがわかる。
男子大学生の就職率は2018年卒97.5%、2019年卒97.4%だったが、2021年卒は95.0%、2022年卒は94.6%まで悪化し、2020年卒の97.5%と比較すると2.9ポイントも悪化した。ただ、2023年卒は97.3%まで回復しており、新型コロナの影響はほぼ払拭されたと言えそうだ。
一方、女子大学生の就職率は、2018年卒は98.6%と非常に高い就職率だ。それが2022年卒では97.1%まで悪化したが、悪化幅は1.5ポイントにとどまり、男子大学生に比べると新型コロナの影響は少なかった。ただ、2023年卒の就職率は97.3%と男子大学生に比べ、回復のペースは緩やかなものとなっている。(グラフ2)
大学生の就職率を文系と理系に分けて見ると、文系は2018年卒が98.2%と高い就職率だったが、2022年卒では95.4%にまで悪化し、悪化幅は2.8ポイントに及んだ。ただ、2023年卒は97.1%まで回復している。
一方、理系では2018年卒の97.2%から2020年卒の98.5%まで就職率が上昇したが、2021年卒は急激に悪化し95.9%まで低下、悪化幅は2.6ポイントとなった。だが、2022年卒は97.4%、2023年卒は98.1%と急速に改善してきている。
文系と理系を比較すると、就職率は理系の方が急激に悪化し、回復も急激なものとなっており、文系は理系に比べて緩やかに悪化したが、回復も緩やかなものとなっている。(グラフ3)
就職率において新型コロナの影響を強く受けているのは、短期大学生(女子)かもしれない。
2020年卒の就職率は98.5%だったが、2020年卒は97.1%と1.4ポイント悪化し、2023年卒は97.3%と前年比0.2ポイントの回復にとどまっており、改善のスピードは非常に緩やかだ。(グラフ4)
大学生の就職希望率は75.1%、上昇の兆しが見えず
さて、2023年卒の大学生の就職率は総じて回復傾向にあるが、喜んでばかりもいられない。大学生の就職希望率が低下を続けているからだ。
就職率は就職希望者の就職者の割合、つまり、就職率は就職希望者の中で就職が決まった人の割合であり、大学生全体に対する就職者の割合を示したものではない。
就職希望率が低下しているということは、就職を希望する者が減少しているのだから、それに対する就職者数を表す就職率が上昇しても、大学卒の就職者数の絶対が増加しているわけではない点には注意が必要だ。
大学生の就職希望率は、2018年卒が75.3%。その後、2020年卒の77.0%まで上昇したが、2023年卒は前年比1.0ポイント低下の75.1%となっており、上昇の兆しが見えない。つまり、2023年卒では、大学生のうち4分の1が就職を希望していないということだ。(グラフ5)
大学生の就職希望率を男女別に見ると、特に男子大学生の就職希望率が低いことがわかる。男子大学生の就職希望率は2018年卒が69.1%で、2020年卒では71.2%まで上昇した。だが、2022年卒は70.4%、2023卒は69.5%と低下が続いており、上昇の兆しが見えていない。
一方、女子大学生は2018年卒が83.9%で、2020年卒では85.0%まで上昇したが、2023年卒は82.8%にまで低下しており、こちらも上昇の兆しが見えない。(グラフ6)
新型コロナ禍を乗り越えて、就職率が改善していることは喜ばしいことだが、大学生の就職希望率が低下を続けていることの問題点を洗い出し、対処していく必要がありそうだ。