コロナ前と後で「新卒の就職率」はどう変化したか? 男子大学生の「就職希望率」は直近69.5%...ここ数年の横ばい続きは懸念(鷲尾香一)

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   新型コロナウイルスの感染拡大は雇用の悪化を引き起こし、新卒の就職率も大幅に悪化した。2023年3月卒業者の就職率は、どの程度改善したのだろうか。厚生労働省と文部科学省の4月1日現在の就職状況調査をもとに、大学生と女子短大生の就職状況を取り上げたい。

とくに短期大学生(女子)は、コロナ後の改善スピードが緩やか

   調査は大学62校、短期大学20校に対して行われた。大学生の2023年3月卒業者の就職率は97.3%と前年よりも1.5ポイント改善した。ただ、新型コロナの影響が出る前の2018年卒は98.0%、2019年卒は97.6%だったことから、新型コロナ前の水準にまで回復はしていない。

   新型コロナが感染拡大し、就職にも影響が出始めた2020年卒の就職率は98.0%と、高水準を保ったものの、2021年卒は急激に悪化して96.0%に、2022年卒は95.8%に低下した。2020年卒と比較すると2.9ポイントも悪化した。(グラフ1)

   大学生の男女別就職率を見ると、男子大学生の就職率により大きな影響が出ていたことがわかる。

   男子大学生の就職率は2018年卒97.5%、2019年卒97.4%だったが、2021年卒は95.0%、2022年卒は94.6%まで悪化し、2020年卒の97.5%と比較すると2.9ポイントも悪化した。ただ、2023年卒は97.3%まで回復しており、新型コロナの影響はほぼ払拭されたと言えそうだ。

   一方、女子大学生の就職率は、2018年卒は98.6%と非常に高い就職率だ。それが2022年卒では97.1%まで悪化したが、悪化幅は1.5ポイントにとどまり、男子大学生に比べると新型コロナの影響は少なかった。ただ、2023年卒の就職率は97.3%と男子大学生に比べ、回復のペースは緩やかなものとなっている。(グラフ2)

   大学生の就職率を文系と理系に分けて見ると、文系は2018年卒が98.2%と高い就職率だったが、2022年卒では95.4%にまで悪化し、悪化幅は2.8ポイントに及んだ。ただ、2023年卒は97.1%まで回復している。

   一方、理系では2018年卒の97.2%から2020年卒の98.5%まで就職率が上昇したが、2021年卒は急激に悪化し95.9%まで低下、悪化幅は2.6ポイントとなった。だが、2022年卒は97.4%、2023年卒は98.1%と急速に改善してきている。

   文系と理系を比較すると、就職率は理系の方が急激に悪化し、回復も急激なものとなっており、文系は理系に比べて緩やかに悪化したが、回復も緩やかなものとなっている。(グラフ3)

   就職率において新型コロナの影響を強く受けているのは、短期大学生(女子)かもしれない。

   2020年卒の就職率は98.5%だったが、2020年卒は97.1%と1.4ポイント悪化し、2023年卒は97.3%と前年比0.2ポイントの回復にとどまっており、改善のスピードは非常に緩やかだ。(グラフ4)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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