「ChatGPT」(チャットGPT)など生成AI(人工知能)の進化によって、人間のように自然な会話ができる「AIチャットサービス」が話題になっている。なかには、「人間の仕事を奪われるのでは?」など不安の声もあるが......。
そんななか、キャリアや転職、就職支援サービスの「ライボ」(東京都渋谷区)の調査機関「Job総研」が2023年5月22日、「2023年 AIチャットの意識調査」を発表した。
職を持つ人々の約9割が「AIチャットを使いたい」と高い評価を与えたのだが、AI自身に調査結果を「将来の予測」を回答させると、人類の衝撃の未来を予想したのだった。それは...?
仕事でAI使う人、エンジニア系ほぼ100%、建設・工場系10%
Job総研の調査は、現在職を持つ20代から50代の社会人956人が対象だ。
まず、「AIチャットを知っているか」と聞くと、「知っている」(88.5%)が約9割だった。また、「知らない」(11.5%)と答えた人にAIチャットの機能を説明したうえで、回答者全員に「その興味度」を聞くと、「とても興味あり」(10.0%)、「興味あり」(23.6%)、「どちらかといえば興味あり」(33.6%)を合わせて約7割(67.2%)が「興味あり派」だった【図表1】。
また、「AIチャットを知っている」と答えた人に、何かしらで使用した経験があるかと聞くと、約6割の63.5%が「使用経験あり」と答えた。年代別では、40代が一番多く、約7割(69.6%)に達した。
使用経験がある人に、「実際に仕事に使ったことがあるか」と聞くと、非常に興味深い結果が出た。全体では、「仕事での使用経験」は約3割(31.1%)だが、職種によって大きな差が出たのだ。
職種別に見ていくと、「SE(システムエンジニア)・エンジニア」が98.0%と、ずば抜けて使用率が高く、ほぼ100%に近い。次いで「企画・管理」(48.1%)、「マーケティング」(46.2%)、「クリエイター」(35.3%)がベスト4位に入った【図表2】。
逆に使用率が低いのは「建設・建築・不動産・プラント・工場」(10.0%)、「販売・サービス職」(14.3%)、「コンサルティングファーム・専門事務所・監査法人」(22.4%)などの順となった【再び図表2】。仕事によって、大きな差があることがわかる。企業の方針によっては、使用を禁止するところもあるからだろう。
AIに「ポジティブ派」9割だが、「仕事奪われる派」も8割
こうした違いを別にして、回答者全員に「今後仕事でのAIチャット使用意欲」を聞くと、また、面白い結果が出た。
「とても積極的に使う」(26.3%)、「積極的に使う」(29.4%)、「どちらかといえば積極的に使う」(30.8%)を合わせた約9割(86.5%)が「積極的に使う派」の回答だったのだ。「仕事での使用に消極的派」は13.5%だった【図表3】。
また、仕事上でAIチャットを使用することで「仕事を効率化できるか」を聞くと、「とても効率化する」(24.2%)、「効率化する」(39.7%)、「どちらかといえば効率化する」(27.2%)を合わせた約9割(91.1%)が「効率化する派」の回答だった【再び図表3】。
この質問には、AIチャットを「知らない」と答えた人にも、その機能を説明した上で回答をもらった。
こうした結果から、仕事の面ではAIチャットに高い評価を与えている人が多いが、そもそもAIチャットにはどんな印象を持っているのだろうか。
回答者全員に聞くと、「とてもポジティブ」(26.6%)、「ポジティブ」(34.5%)、「どちらかといえばポジティブ」(34.3%)を合わせて9割超(95.4%)が「ポジティブ派」の回答だった【図表4】。
また、その印象を一言で表現する感情を聞くと(複数回答可)、「興味」(76.4%)で最も多く、次いで「期待」(69.4%)、「希望」(37.6%)、「驚き」(25.1%)と続き、ネガティブな言葉の「不安」(20.7%)、「恐怖」(15.0%)、「困惑」(11.5%)は少ない結果となった【再び図表4】。
ところで、AIチャットの普及が人々の仕事を奪うのではないかと心配されている。回答者全員に「AIチャットが仕事を奪うと思うか」と聞くと、「とても思う」(15.5%)、「思う」(26.7%)、「どちらかといえば思う」(34.7%)を合わせた約8割(76.9%)が「AIに仕事を奪われる派」の回答だった【図表5】。
「AIを使って生産性を上げ、副業で収入を上げたい」
回答者からAIチャットに対する意見をフリーコメント聞くと、まず、ポジティブな意見では――。
「革新的な技術だと思うので、とても期待しているし、積極的に使っていきたい」
「うまく使えば効率化できると思うので、プラスのイメージが強い」
「AIを使うことで生産性が上がれば、副業を始めて、収入を上げたい」
「人間の仕事自体は奪わないと思うが、人間の仕事をより効率的に簡単にしてくれそう」
「より生産性の高い仕事へシフトチェンジできるチャンスとして捉えるべきだと思う」
積極的に使おうという意欲が伝わってくる。一方、ネガティブな意見では――。
「情報の信頼性に不安があるため、今のところ仕事で使えるレベルではない」
「とても興味はあるけど、情報漏洩の不安があり、まだ使った経験はない」
「詐欺メールやサイトが、より巧妙になってしまうのではないかと懸念している」
「いつのまにか自分の個人情報を抜き取られそうで、少し怖い」 「周囲が使い始めたので気になるが、情報漏洩が心配でまだ使えていない」
不安な気持ちから踏み込めないでいるようだ。
AIチャットが予測する未来像...失業率の増大と社会の大変革
Job総研では、今回の調査結果をふまえた「まとめ」を、AIチャットに聞いている。その回答「AIチャットが予測する未来像」がこれだ。
「調査結果から、AIチャットは今後ますます普及し、私たちの生活や仕事に大きな影響を与えることが予測されます。AIチャットは、現在、顧客サービス、カスタマーサポート、マーケティング、広告など、さまざまな分野で使用されていますが、今後は、教育、医療、金融など、さらに多くの分野で使用されるようになると考えられます。
AIチャットの普及により、私たちは、手間をかけずに、いつでも、どこからでも、必要な情報を入手できるようになるでしょう。また、AIチャットによるサポートを受けることで、より効率的で効果的なコミュニケーションをとることができるようになります。
しかし、AIチャットがすべての職業を奪ってしまうのではないかという懸念もあります。AIチャットは、現在、多くの人が従事している単純で反復的なタスクを自動化することができます。そのため、AIチャットの普及により、これらのタスクに従事する人々の失業率が上昇する可能性があります。
AIチャットが私たちの生活や仕事にどのような影響を与えるのか、まだ明らかになっていないことはたくさんあります。しかし、AIチャットの普及は、私たちの社会に大きな変化をもたらすことは間違いありません」
AIチャット自らが、多くの人間の仕事を奪ってしまい、社会に大変革をもたらすと宣言したに等しい。どうする私たち?
調査は2023年5月2日~3日、1年以内~10年以上、20人~1000人規模以上の会社に勤務した経験がある社会人956人に、インターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)