株価と公的資金返済の関係をいったん「清算」する荒技...少数株主が割を食う?
こうした状況を踏まえ、SBIHDが打ち出したのがSBI新生銀株をさらに買い増して、上場廃止にする手法だった。株価と公的資金返済の関係をいったん「清算」する荒技だ。
SBIHDと国は2023年5月12日、TOB成立を前提にした契約を締結し、25年6月までに返済期間を含めた合意を目指すことで一致した。今回の上場廃止が、公的資金返済を動かすためのものだったことが分かる。
今後は配当や利益剰余金を公的資金返済に当てるなどより柔軟な対応がとれる、としている。SBIHDの北尾吉孝会長兼社長は「(新生銀を上場廃止にすることで)経営の自由度が高まる。収益力も高まる」と自信満々だ。
計画では、SBI新生銀のTOBの買い付け価格は1株2800円。取得額は1500億円超。5月15日に買い付けを開始しており、6月23日まで行う。成立すれば、SBIHDの新生銀株の保有割合は、国保有分を除く77%に達する。
もちろん、買い付け価格は公的資金返済に向けた目標だった「7450円」の半分に満たないから、国はTOBに応じない。引き続き新生銀株を保有することで、SBIHD側と合意している。
つまり、将来的に国は公的資金を毀損しないかたちで、返済を受けるということだ。具体的にどのように返済していくかは未定だが、国以外の少数株主だけが割を食う構図になりかねない。
「保有株売却による公的資金返済が見込めない中、事態を前に動かすには新たな手が必要だった」。金融庁関係者は公的資金返済を優先するため上場廃止を容認するが、あまりに強引な手法は今後に禍根を残す恐れもある。(ジャーナリスト 白井俊郎)