マツダなど広島県ゆかりの地元企業26社が、広島市で開かれた主要7か国首脳会議(G7サミット)に合わせ、地元企業の戦後復興と未来を紹介する特別展を2023年5月18日から同市内で始めた。同展は6月11日まで。
果たしてマツダなど広島企業は、G7サミットで知名度を高めることができたのだろうか。
マツダ、オタフクソース、大創産業など出展 広島東洋カープは「たる募金」に使われた日本酒樽を披露
「Pride of Hiroshima(プライド・オブ・ヒロシマ=広島の誇り)展」と名付けられた展示会には、マツダはじめ、お好み焼きのソースで有名なオタフクソース、100円ショップのダイソーで知られる大創産業、プロ野球球団の広島東洋カープなど「全国区の広島企業」が出展した。
G7サミットに合わせ、世界から訪れる政府関係者や報道関係者に広島企業の存在と、これまでの歩みを知ってもらうのが狙いだ。
マツダは戦後の日本の復興を支えた3輪トラックを展示した。終戦間もない1945年12月、鉄板を集めて生産したという。
マツダは前身の東洋工業が戦前から「GA型」と呼ばれる3輪トラックを生産していたが、45年8月の広島への原爆投下から、わずか4か月後に生産を再開した。その後、1960年代までマツダの3輪トラックはバリエーションを拡大し、一時代を築くことになる。
このほかマツダは、世界に誇るライトウエイトスポーツカー「ロードスター」を展示した。このロードスターは特別仕様で、ウクライナの国旗と同じく青と黄色に塗り分けられた。
サミットに参加したゼレンスキー大統領が、このロードスターを見たかどうかわからないが、注目の1台となった。
ほかに、オタフクソースは広島のソウルフードであるお好み焼きの屋台を展示した。広島東洋カープは戦後の球団草創期にファンから酒樽にお金を投じてもらった「たる募金」に使われた日本酒樽のほか、球団のユニフォームなどを展示した。
各国首脳を出迎えたのはBMW バイデン大統領はGMベースの専用車「ビースト」で移動 マツダ車でのエスコートは叶わず
では、G7期間中の展示各社への注目度はどうだったのだろうか。
サミットに先立つ各国首脳と岸田文雄首相の個別会談では、英国のスナク首相が18日の夕食会をはさんだ会談で、広島カープのロゴの入った真っ赤な靴下で登場し、話題を呼んだ。カープファンを自認する岸田首相が「わざわざ履いてきてくれたんですね」と喜ぶ場面もあった。
オタフクソースは、サミットで各国首脳に振舞われたお好み焼きのソースに使われた。外務省が明らかにした地元食材のひとつに登場した。
ところがマツダは、サミットで存在感がいまひとつだった。
米国以外の各国首脳を出迎えたのはBMWの最上級セダン「7シリーズ」だった。また、米国のバイデン大統領は、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「キャデラック」をベースとした大統領専用車「ビースト」を持ち込んだ。
BMWは同社の日本法人が政府に提供を申し入れたもので、防弾ガラスなど特別仕様だったとみられる。岸田首相は、いつものようにトヨタ自動車の最上級セダン「センチュリー」で移動した。
もしもマツダに高級セダンがあれば、地元広島のサミットで各国首脳をエスコートする絶好の機会だったが、叶わなかった。
仮にマツダが車両を提供したとすれば、高級SUV「CX-60」だったろう。CX-60はマツダが「ラージ戦略」と呼ぶ直列6気筒エンジン、後輪駆動のSUVだ。世界的にブランドイメージの向上を狙う戦略商品だけに、「G7サミットで使ってもらえていたら」と、マツダや広島関係者は悔やんだのではないか。(ジャーナリスト 岩城諒)