京セラの株価が2023年5月16日の東京株式市場で一時、前日終値比251円(3.4%)高の7649円まで上昇し、年初来高値を更新した。
前日に23年3月期連結決算(国際会計基準)とともに発表した24年3月期の連結営業利益予想が、市場予想を上回る水準にあり、減益だった23年3月期に比べて業績の回復を期待できることが好感された。
株主還元策として、自己株式を除く発行済み株式総数の2.25%に当たる806万株、500億円を上限とする自社株買いをあわせて発表したことも歓迎されている。
24年3月期の業績予想...最終利益13.3%増1450億円見込む
それでは2024年3月期の業績予想を確認しておこう。売上高は前期比3.7%増の2兆1000億円、営業利益は14.4%増の1470億円。最終利益は13.3%増の1450億円。
京セラは「上期(4~9月)後半以降は緩やかな回復を見込む」とし、「半導体関連市場向け部品を中心に生産体制を拡充し、増産を進め、産業・車載用部品や電子部品の事業拡大を図る」と強調している。営業利益予想は5月15日時点の市場予想平均1388億円を上回る。
SMBC日興証券は決算と業績予想の発表を受けたリポートで、「(機械工具や携帯電話端末などの)ソリューション事業はやや楽観的との印象もあるが第一印象はポジティブ」と記した。
野村証券はリポートで2024年3月期について、「設備投資(2750億円)と研究開発費(1150億円)がそれぞれ過去最高とされ、主要3セグメントの全事業で増収が見込まれている点がポイント。需要環境が良いというよりは積極的な事業投資計画を踏まえての強気な計画に映る」と指摘した。
携帯電話端末は苦戦...消費者向けは撤退へ 法人向けは継続
同時発表の2023年3月期決算は、売上高が円安効果もあって前期比10.1%増の2兆253億円と伸びた。しかし、営業利益は13.7%減の1285億円、最終利益は13.8%減の1279億円と減益だった。
スマートフォン向け電子部品の需要が落ち込んだことなどによる。携帯電話端末の苦戦も一因だったが、5月15日の決算説明会で、消費者向け携帯電話端末から撤退することを発表した。一時は国内市場で存在感を示したが、採算ラインに乗せることは困難と判断した。なお、法人向けは続ける。
決算発表翌日の16日には中期経営計画も発表した。
2026年3月期までの3年間で設備投資額は最大8500億円を見込み、このうち半導体関連に4000億円を投じる。3年間の設備投資としては全体としても半導体関連としても過去最大規模となる。
ただ、発表内容は2022年11月の発表した見通しに沿ったもので「サプライズはない」として、17日の市場で株価は反応薄だった。(ジャーナリスト 済田経夫)