鉄道各社が子供運賃を均一化する動きが広がっている。
小田急電鉄が2022年春から子供運賃の「一律50円」を導入していたが、京浜急行電鉄も2023年10月から、子供運賃を全区間どこまで乗っても「75円均一」にする。
今なぜ、子供均一運賃なのか。
子供運賃、鉄道収入全体からすれば小さい 鉄道でお出かけを...大人の乗客増に期待
京浜急行の子供均一運賃は、パスモなどICカードで乗車した場合に適用する。75円は大人の初乗り運賃の半額。羽田空港行きの空港線に乗った場合だけ、子供運賃は25円加算して一律100円とする。
京浜急行によれば、環境や人権問題を重視する企業活動「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の取り組みの一環だという。「子育て世代の家計負担を軽減し、鉄道でのお出かけがしやすくなるように」と説明している。
鉄道関係者の話では、子供運賃は鉄道各社の鉄道収入全体からすれば非常に小さく、経営への影響は軽微だという。そのうえで、「子供の頃から親しんで鉄道ファンになってもらえば、大人になった時に利用者になってくれる可能性がある」という期待もでき、子供運賃均一化のコストパフォーマンスは意外といいようだ。
さらに、子供が乗車する時は親が一緒に乗車することが多く、「大人の乗客を増やすことにもつながる」という声もある。
先鞭をつけた小田急の子供一律運賃も「子供の成長と子育て世代を支えるため、鉄道会社ならではのアプローチをしよう」との狙いから導入された。京浜急行と同様に、ICカードを利用した場合に適用される。
子供のIC運賃を持続的に一律で低額化する取り組みは小田急が全国初だったこともあり、導入時から大きな反響が寄せられた。「片道50円で、往復100円という区切りの良さがわかりやすく、子供にとっても使いやすい」と現在に至るまで好評を博している。
大阪の泉北高速鉄道も「子供均一運賃」導入へ 通学定期券代の「ポイント還元」施策おこなう会社も
首都圏だけでなく、近畿圏でも同じような動きが始まっている。
大阪府内で事業展開する泉北高速鉄道は2023年10月から、ICカードで乗車した子供の運賃を「一律50円」にする計画だ。
泉北高速は同じ10月から、大人の初乗り運賃を現状の170円から180円に引き上げるなど運賃改定を実施するが、通学定期については運賃を据え置く。子供運賃の一律50円化とともに、「子育てしやすい環境を提供したい」とPRしている。
一方、子供均一運賃とはニュアンスは異なるが、東武鉄道は子供の通学定期券を東武カードで購入した場合などに、定期券代の全額分をポイントで還元する「子育て応援プログラム」を22年春から実施している(エントリーが必要となる)。
政府が子育て支援策を相次ぎ打ち出すなど子育てをめぐる環境が注目される中、鉄道各社の多彩な取り組みが今後も増えそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)