東海道新幹線の「自動運転試験」公開 誤差たった2秒、停止位置のズレわずか9ミリ 近い将来、新幹線は運転士不在に!?

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   到着時間の誤差はわずか2秒、停止位置も9ミリずれただけ――。

   JR東海が東海道新幹線の自動運転走行試験を報道陣に公開した。その測定結果は、驚くべき正確さだった。

  • JR東海、東海道新幹線の「自動運転試験」公開(写真はイメージ)
    JR東海、東海道新幹線の「自動運転試験」公開(写真はイメージ)
  • JR東海、東海道新幹線の「自動運転試験」公開(写真はイメージ)

速度が速く、駅間が長い「新幹線」では、これまで「自動運転」は難しかった

   JR東海は2023年5月11日未明、東海道新幹線の最新車両「N700S」で、開発中の自動列車運転システムの走行試験を静岡県の浜松~静岡間で公開した。同社はこれまでも自動運転の走行試験を行っているが、メディアへの公開は今回が初めて。

   自動運転といっても、今回は運転士が乗車。浜松駅で運転士が発車ボタンを押すと、新幹線(1編成16両)がゆっくりとスタート。徐々にスピードを上げ、途中の徐行区間では減速しながら、最高時速285キロで約70キロ離れた静岡駅に向かった。

   静岡駅が近づくと、新幹線は徐々に減速してホームに進入。指定の停止位置にピタリと停まった。JR東海が調べたところ、到着時間は想定より2秒早く、停止位置のずれは9ミリだけだった。

   JR東海によると、誤差の目安は15秒、50センチとされ、今回はほぼ定刻通りの自動運転が可能であることを実証した。

   鉄道の自動運転は東京都の新交通システム「ゆりかもめ」など駅間が短く、運転速度が低い一部の電車ではすでに実用化している。ところが、新幹線のように速度が速く、駅間が長い鉄道は、これまで自動運転が難しいとされてきた。

   このため現在、東海道新幹線は運転士が発車と到着の時刻、路線の勾配やカーブ、天候などを考慮しながら、手動で細かくスピードをコントロールしている。

   ところが今回の自動運転では、勾配などさまざまな情報をシステムが0.1秒ごとに演算することで、運転を人間よりもきめ細かく制御できるようになった。

東海道新幹線の「半自動運転」、28年ごろ導入へ 運転士は乗務し、万一の際の緊急停止

   東海道新幹線は「のぞみ」「ひかり」「こだま」が一定の間隔を置いて走る過密なダイヤだが、自動運転の方が正確かつ安全で、ダイヤを維持しやすいのだという。

   JR東海が実際に導入を目指しているのは、「ゆりかもめ」のような完全自動運転ではなく、今回のような「半自動運転」だ。

   運転席には運転士が乗務して発車ボタンを押すほか、万一の際には緊急停止の操作を行う。発車後は自動運転になり、徐行を含めスピードの制御と停止はシステムが行う。

   このシステムは「GoA(Grade of Automation)2」と呼ばれる半自動運転で、JR東海は2028年ごろの導入を目指している。

   GoA2が実用化されると、東海道新幹線は「運転士が駅発着時のホームの安全確認やドアの開閉を行うことになる」という。

   それでは、車掌は何をするのか。

   JR東海によると、「車掌は列車内で旅に不慣れなお客様のサポート業務に注力し、また巡回強化によって車内セキュリティーを強化させる」という。

JR東日本、上越新幹線で「GoA3レベル」自動運転導入へ 運転士のいない自動運転も可能

   新幹線の自動運転をめぐっては、JR東日本が2023年5月9日、「ドライバー(運転士)レス運転」を2030年代中ごろに、上越新幹線の東京~新潟間で導入すると発表している。

   これはJR東海のGoA2レベルの半自動運転の先を行くもので、GoA3レベルと呼ばれる。これは列車に緊急時の避難誘導などに当たる係員は乗務するものの、運転士のいない自動運転となる。

   「ゆりかもめ」は乗務員がいないGoA4レベルの完全自動運転だ。長距離を走る新幹線は車掌など乗務員まで無人にするのは難しいかもしれない。それでも、ゆりかもめと同様に、専用の高架線軌道を走るため、踏切のある在来線に比べると、運転は自動化しやすいのだ。

   自動運転の方が正確かつ安全でダイヤの維持も楽となれば、車掌より先に運転士が不要になってしまうのだろうか。いずれにせよ、新幹線がゆりかもめ並みに運転士のいない自動運転となる日は、そう遠くなさそうだ。(ジャーナリスト 岩城諒)

姉妹サイト