「ゼロゼロ融資」利用後の倒産、9か月連続で40件超 大丈夫? これからが返済のピークなのに...

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   実質無利子・無担保融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」の利用後に倒産した企業が、2022年8月から9か月連続で40件を超えている。

   今年4月は43件で、前年同月から38.7%増えた。5月11日、東京商工リサーチが発表した。2020年7月以降の累計は787件に達した。

   コロナ禍の資金繰り支援として導入されたゼロゼロ融資は、中小・零細企業の経営を下支えし、倒産抑制に大きな効果を発揮した。しかし、副作用として過剰債務をもたらし、業績回復が遅れた企業は新たな資金調達が難しく、息切れ倒産につながっている。

前年同月ゼロの「建設」急速に悪化、4月は12件に

   調査によると、2023年4月に「ゼロゼロ融資」の利用後に倒産した企業は43件だった。前年同月比38.7%増。ゼロゼロ融資の利用後の倒産は、2022年3月から急増。その後ハイペースで推移してきた。昨年8月からは9か月連続で40件を超える高水準にある。

   ただ、今年の月次件数では、4月は最も少なかった。

   また、4月の負債総額は96億8900万円で、前年同月(137億100万円)より29.2%減少した。負債50億円以上の倒産が発生せず(前年同月1件)、2か月連続で前年同月を下回った。【図1参照】

図1 ゼロゼロ融資後の倒産月次推移(東京商工リサーチ調べ)
図1 ゼロゼロ融資後の倒産月次推移(東京商工リサーチ調べ)

   産業別でみると、前年同月は発生がなかった建設業が12件で、最多。全体の27.9%を占めていた。東京商工リサーチは、資材価格の高騰や調達難による工期延長に加え、人手不足による外注費負担の増加も重なり資金繰りを圧迫した、とみている。

   次いで、製造業(前年同月と同数)とサービス業他(同)が、それぞれ8件。卸売業が7件(前年同月は8件)、小売業(同4件)は3件。情報通信業は前年の1件から2件増えて3件だった。

   農・林・漁・鉱業と不動産業が、それぞれ1件。金融・保険業と運輸業は発生がなかった。【図2参照】

   10産業のうち、前年同月と比べて増加は3産業、減少は3産業、同数は4産業だった。

図2 産業別状況(4月)最多は建設業の12件(東京商工リサーチ調べ)
図2 産業別状況(4月)最多は建設業の12件(東京商工リサーチ調べ)

再建型は「ゼロ」 ゼロゼロ融資後の生き残り難しく...

   さらに、ゼロゼロ融資の利用後の倒産状況を業種(中分類)別でみると、「総合工事業」が7件で最多、次いで「職別工事業」が4件で続く。「資材価格の高騰や資材調達の遅れが経営を直撃し、持ちこたえられなかった」(東京商工リサーチ)とみている。

   コロナ禍の受注低迷や納期延長が響いた「情報サービス業」が3件で続いた。

   このほか、対面サービス業の「洗濯・理容・美容・浴場業」、「飲食店」、飲食店向けの「飲食料品卸売業」、アパレル関連の「繊維・衣服等卸売業」などが、それぞれ2件で並ぶ。【図3参照】

   負債総額でみると、機械器具卸売業の17億2000万円が最も多かった。

図3 ゼロゼロ融資の利用後の倒産状況(2023年4月)を業種別にみると...(東京商工リサーチ調べ)
図3 ゼロゼロ融資の利用後の倒産状況(2023年4月)を業種別にみると...(東京商工リサーチ調べ)

   また、ゼロゼロ融資の利用後の倒産を形態別でみると、破産が38件(前年同月は25件)、特別清算1件(同1件)と消滅型が39件(同26件)も発生した。全体の約9割を占めた。その一方、民事再生法(前年同月1件)と会社更生法(同ゼロ)の再建型の発生は、今年1月以来3か月ぶりになかった。

   このほか、取引停止処分が前年同月と同数の4件発生した。

   ゼロゼロ融資を受けても、業績改善が見込めない企業は経営再建の見通しが立たず、生き残りが難しいことを示している。

中小・零細企業の「息切れ倒産」増える可能性

   従業員数でみると、最も多かったのが「5人未満」の17件で、全体の約4割を占めた。

   次いで、「5人以上10人未満」と「10人以上20人未満」が、それぞれ11件で続いた。従業員数10人未満の小規模倒産が6割超(28件)を占めた。

   前年同月に2件発生した50人以上300人未満はゼロで、300人以上の倒産も発生がなかった。

   さらに、地区別で最も多かったのは関東の19件で、前年同月の2.7倍(171.4%)増と急増。全体の44.1%を占めた。次いで、九州が7件(前年同月と同数)、近畿が6件(同7件)、中部が4件(同1件)で続いた。中国を除く8地区で発生した。

   都道府県別でみると、東京都が14件で最多。次いで、大阪府の4件、福岡県と愛知県がそれぞれ3件で続く。大都市圏の4都府県で過半数(24件、構成比55.8%)を占める結果となった。

   ゼロゼロ融資は、これから返済のピークを迎える。政府は2023年1月、返済負担を和らげる新たな借換保証制度「コロナ借換保証」を創設した。

   保証限度額は民間ゼロゼロ融資の上限額6000万円を上回る1億円で、保証期間も10年以内(元金棚上げ期間最長5年を含む)。「ただ、経営行動計画書の作成や金融機関による継続的な伴走支援が必要で、どこまで普及するか未知数」と、東京商工リサーチはみている。

   ゼロゼロ融資の返済に加え、人手不足や物価高など経営環境は厳しい状況が続くなか、業績回復が遅れ、手元資金が枯渇した中小・零細企業の息切れが、今後も倒産を押し上げる可能性は高い。

   なお、調査は企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。

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