小中学校教師の「働き方改革」進んでいるのか? 一見、在校時間は減少傾向にあるが...(鷲尾香一)

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   文部科学省は2023年4月28日、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況等を把握・分析することを目的とした2022年度の「教員勤務実態調査」を発表した。前回調査(2016年度)と比較して、平日・土日共に全ての職種において在校等時間が減少していた。

   調査対象は、小学校1200校、中学校1200校に勤務するフルタイムの常勤教員(校長、副校長、教頭、教諭等)で、小学校1191校・1万7762人、中学校1186校・1万7477人から回答を得た。

在校時間が長いのは、平日は副校長・教頭、土日は教諭...部活の影響で2時間超

   調査結果によると、平日の教師の1日当たりの在校時間を職種別にみると、小中学校とも、最も在校時間が長いのは副校長・教頭で、小学校で11時間45分、中学校で11時間42分となっている。副校長・教頭は小中学校とも校長よりも2時間近く在校時間が長くなっている。

   2016年度調査と比較して、在校時間の減少幅が最も大きかったのは、小中学校とも講師で、小学校で36分、中学校で49分の減少、次いで、小中学校とも教諭で、小学校で30分、中学校で31分減少している。(グラフ1)

   一方、土日の在校時間では、小学校は副校長・教頭の59分、中学校は教諭の2時間18分が最も長くなっている。特に、中学校教諭は唯一2時間を超えている。これは部活動などの影響によるものだ。

   2016年度調査からの減少幅は、小学校では副校長・教頭が50分と最も大きく、次いで校長の40分となっている。半面、中学校では講師が1時間17分、教諭が1時間4分と大きく減少しているものの、中学校教諭の在校時間が長いのは前述の通りだ。(グラフ2)

   平日の年齢階層別の在校時間をみると、小中学校とも年齢が若いほど、在校時間が長くなっている。

   小学校では30歳以下が唯一11時間を超えており、中学校では40歳以下が11時間を超えている。それでも、中学校の30歳以下は2016年には12時間を超えていたことから、在校時間は短くなってきている。

   2016年度との比較では、もっとも在校時間が減少したのは、小学校の30歳以下で46分、次いで、中学校の40歳以下が39分となっている。(グラフ3)

   土日の在校時間は大きく変化している。小学校ではすべての年齢階層で在校時間が30分台となったのに対して、中学校では50歳までが2時間を超えている。それでも、2016年度と比較すると、特に40歳までで在校時間は大きく減少している。

   2016年度との比較では、小学校で30歳以下が47分減少し、最も大きな減少となっているが、中学校では30歳以下は1時間40分の減少、31~40歳は1時間39分の減少となっている。2016年度には中学校の30歳以下は4時間20分、31~40歳は3時間49分だったが、共に2時間台まで減少した。(グラフ4)

在校時間が減少している半面、持ち帰り仕事の時間は増加

   平日の教諭の在校時間の減少は、小学校では学校行事が11分、成績処理が8分減少していることが大きい。一方で、主担当の授業は7分、朝の業務と学習指導は6分の増加となっている。

   中学校では学校行事が12分、学年・学級経営が10分、集団での生徒指導が8分減少し、主担当の授業が11分、朝の業務が7分増加している。

   これが土日になると、小学校では主担当の授業と学校行事が5分減少、中学校では部活動・クラブ活動が40分、学校行事が8分減少している。

   つまり、平日の在校時間の減少は、小中学校とも学校行事時間の減少、土日は中学校の部活動・クラブ活動時間の減少によるところが大きい。

   だが、在校時間が減少している半面、持ち帰り仕事の時間は増加している。2016年度との比較では、在校時間は小学校で30分、中学校で31分減少しているが、持ち帰り仕事時間は小学校で8分、中学校では12分増加しており、実質的な時間減少は小学校で22分、中学校で19分にとどまっている。(グラフ5)

   働き方改革が最も遅れている仕事の一つと言われるのが、教師など学校教育の関係だ。2016年度との比較では、わずかながら在校時間が減少しているが、その要因は学校行事や部活動・クラブ活動時間の減少によるもの。

   2022年は新型コロナウイルス感染拡大による行事や部活動などへの影響が残っており、教師など学校教育関係者の働き方改革が進んでいると言えないのが実態だろう。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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