IT担当者がいらない「ずぼらなIT化」とは?

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   従業員が20人以下の小さな会社こそ大企業並みにITツールを無料もしくは安価に使える、と説いているのが、本書「今日からできるスマホと無料ツールで小さな会社こそIT」(日本橋出版)である。IT担当者も不要という、そのワケとは――。

「今日からできるスマホと無料ツールで小さな会社こそIT」(中村太陽著)日本橋出版

   著者の中村太陽さんは、広島大学理学部数学科卒業。広島のライフライン企業に入社。IT部門マネジャーなどを務めた。

ITが少し苦手な経営者向けの本

   本書は、ITが少し苦手な経営者向けの本だ。小規模事業者の従業員がITを使いこなすことを目指している。しかも、IT担当者がいらない「ずぼらなIT化」の手法だ。

   IT担当者が不要にできる理由の1つは、システム開発をしないからだ。すべて無料のアプリを活用し、機器の操作については自己責任で行う。また、教える役目を作らず、みんなが理解できることから着実に進める。

   第1章の「装備はこれだけ 小さな会社の進め方」で基本的な考え方を説明している。

   メインは、従業員のスマートフォンだ。次に必要なのは、事務所のパソコン1台。できればプリンターもあれば便利だ。

   従業員のスマホを使うことの意義を「BYOD」という言葉を紹介し、説明している。

   Bring Your Own Devices、直訳すると「自分のデバイスを持参」。

   海外では大きな流れになっているそうだ。自己所有のスマホを仕事に使うにあたり、費用負担が課題になる。月々に払っている費用は千差万別だ。その費用の一部を負担するべきなのか。

   唯一の解決策は、事務所では会社の光回線の通信をWi-Fiで利用させること。そして、事務所にいるときは、充電を許可すること。業務連絡は、メールやチャットなど別の方法に切り替えるので、個人の持ち出しは少なくなると見ている。会社が一部費用を負担するのも現実的かもしれないという。

おススメツールは?...メール、ドキュメント共有、オンラインストレージ

   第2章から第8章では、具体的なツールについて解説している。まずは電子メールから。

   どんな会社でも、すべての従業員に仕事用の個人メールアドレスが必要だ、と強調している。「名刺にメールアドレスがない場合、縁のないお方と判断します」と手厳しい。確実に連絡が取れるのか不安があるからだ。そして勧めるのが、Gmailだ。

   メールがあまり使えない人を考慮し、最初の社内ルールは、1日以内返信、帰宅後と休日の返信は求めない、本文は宛名と要件のみ、など簡単なルールで始めることを提案している。

   詳しい操作方法も書いている。名刺にメールアドレスを加える段階で、メールとは何かを再確認し、社外向けの正規ルール、社内ルールは簡単なまま、を基本に乗り切ればいいという。

   次がいつでもどこでも資料が取り出せる「ドキュメント共有」だ。文書管理を紙資料からデジタル化するメリットをさまざま挙げている。外出先でも文書をスムーズに確認できることは、コロナ禍におけるテレワークで大いに役立った。最初は社内掲示板から始めればいいという。

   無料で使えるオンラインストレージ7社を比較し、Googleドライブを推奨している。保存容量が15ギガで無料だ。接続台数に制限がない。

   スケジュール共有には、Googleカレンダーを勧めている。複数のカレンダーが持てるため、仕事用と私用などに使いわけができる。経営者なら仕事用だけを従業員に見せることが可能だ。

   立ち上がりはストレスを小さくするため、簡単なことから始めればいいという。すべてのメンバーの社外との約束、休みや早出早退、施設の予約などを記入する。

LINEをビジネスに導入 絵文字はOK、スタンプはNG

   チャットをビジネスに導入する最大の目的は、ビジネスの圧倒的な高速化だ。

   たとえば、現場作業で判断に迷ったときに、詳しく報告しながら、アドバイスをもらう。客先で、想定外の依頼があったときに、誰かに尋ねて、その場で解決する。目指す効果は、「仕事のフットワークをよくすること、業務の精度向上」にある。

   あえて一般消費者向けのLINEを選ぶのは、すでに従業員の多くが利用者だからだ。

   最初の社内ルールは、すべてのメンバーが問題なく、操作できるようになったら、社内のやりとりは、原則チャットを使う(電話は禁止)、これまでメール連絡だったものをチャットに切り替えるなどだ。返答は、就業時間内とすることも大切だ。

   チャットですること・しないことを挙げている。要件のみ短文が原則、絵文字も感情を表すので歓迎。既読になっても回答を求めない、スタンプは多用しない、などだ。

   一般消費者向けのLINEでスタートし、安定したら、管理機能のあるLINE WORKSへの移行を勧めている。まったく別のアプリだが、ビジネスチャットが備えている管理機能も、フリープランで利用できる。

   名刺管理アプリはいろいろあるが、個人版無料のCamcard Liteの一択だという。人脈管理システムのつくり方を具体的に説明している。

   日本では無料の入力代行サービスをしている会社もあるが、中村さんは、自分で使いこなすべきデータベースは、自分で正しく入力してこそ意義がある、と考えている。世界では圧倒的にCamcardが優勢だという。

   このほかに、書類の簡単電子化に使える無料のカムスキャナーの使い方、Zoomによるテレビ会議についても取り上げている。

   「セキュリティーは使い始めた後に考える」と割り切り、IT化に検討すべきセキュリティー対策にも触れている。

   「小規模事業者のIT化は日本の最大の課題」という中村さんの考えに共鳴した。各ツールのパソコンとスマホでの操作法を図解しているので、マニュアル本としても活用できる実用的な本だ。(渡辺淳悦)

「今日からできるスマホと無料ツールで小さな会社こそIT」
中村太陽著
日本橋出版
2420円(税込)

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