今こそ、日本企業の豊富な余剰資金を有効活用しよう
さて、日本株上昇機運に「課題」はないのだろうか。
海外投資家の見直し姿勢が進む中で、日本企業の改革が問われていると強調するのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「高値更新で見直し機運高まる日本株の注目点」(5月18日付)のなかで、日本株と先進国株のROE(自己資本利益率)の差と、海外投資家が日本株を購入した割合を重ねたグラフを示した【図表3】。
ROEは、株主が出資したお金を元手に、企業がどれだけの利益を上げたのかを数値化したもので、「企業がどれぐらい効率よくお金を稼いでいるか」を示す財務指標だ。【図表3】をみると、日本企業の「稼ぐ力」に比例して、海外投資家の日本株購入が変化しているのがわかる。
そのことから、石黒氏はこう指摘する。
「海外投資家の売買動向は日本企業のROE(収益力を表す指標)の動向に概ね連動する傾向があります【図表3】。近年は海外株と比べて日本株の稼ぐ力が劣後していたことから、海外勢は日本株投資に消極的な姿勢をとってきました」
そこで、今後重要なのは、日本企業の豊富な資金力を有効活用して、海外投資家の日本企業に対する期待の高まりを裏切らないことだ。石黒氏は、日本企業の内部留保など現預金残高のグラフを示しながら、こう提案する【図表4】。
「幸いなことに、日本企業が有する現預金は潤沢です【図表4】。企業が余剰資金の有効活用を行なうことで、資本効率・収益力の向上を実現すれば、海外勢の投資資金が日本株に再度流入するとみられます。足元でROEの改善も顕在化し始めており、こうした動きが続くかが、日本株の先行きを見るうえでのポイントとなりそうです」