「無料のWebカウンセリングのつもりが、50万円!」。2024年卒の就活戦線が追い込みにさしかかるなか、学生の不安と焦りに付け込み、高額のセミナー代をだまし取るトラブルが増えている。
国民生活センターが2023年5月17日、「学生の就活の不安につけ込むトラブル-Web会議で無料カウンセリング等を受けるだけのつもりが高額契約に」という警告リポートを発表した。
いったい、どんな手口なのか。人生の岐路で、余計な被害に遭わないためにも対応策を学ぼう。
Web会議中、不意打ち的に高額セミナーの契約を迫られる
国民生活センターによると、就職活動中の学生の不安につけ込み、高額なセミナーやビジネススクールなどを契約させる被害は毎年増えており、2022年度は198件に達した【図表1】。
被害金額も、一番多いのが50万円以上100万円未満(36.4%)で、次いで10万円以上50万円未満(30.8%)で、中には100万円以上(6.6%)のケースもある【図表2】。
2020年頃までは、就活セミナー会場や就活関連事業者の事務所などで強引な勧誘を受けるケースが一般的だったが、最近はトラブルの傾向に変化が見られる。学生が就職活動にインターネットやSNSを使うケースが増えたため、Webの無料カウンセリングを舞台にしたトラブルが多くなった。
Webの無料カウンセリングは、就活生自身がインターネット広告で見つけたり、SNSで知り合った人から紹介されたりとさまざまだが、Web会議中に不意打ち的に高額なセミナーなどの契約を迫られるのが特徴だ。
こんな事例が代表的だ。
【事例1】Web会議で無料カウンセリングを受けたら、50万円の就活セミナーに入らされた
就活に悩み、SNSで就活塾の広告を見てサイトに登録し、Web会議での無料カウンセリングを受けた。「自己分析や面接対策のセミナーを受ければ大手企業に100%内定する」と言われた。
約50万円かかると言われたが、その場で判断するよう迫られ、考える余裕もなく勧められるまま申し込んだ。その後、「セミナーのオリエンテーションのために頭金2万円を支払うように」と言われ、振り込んだ。Web会議でのオリエンテーションでセミナーの説明を受け、電子の契約書面にサインをした。
後日、友人に相談すると高額だと言われ、無料通話アプリで「高額で支払えないのでやめたい」と担当者に伝えると、「今やめるのはもったいない。みんな苦しくてもローンで支払っている」と説得され、解約に応じてもらえなかった。
その後、担当者やローン会社からの電話に出ないでいると、無料通話アプリで「解約に応じる」と連絡が来た。しかし、解約料として契約金額の20%を請求され、納得できない。(2022年5月・20歳代男性)
「エントリーシートを添削してあげる」という親切心の罠
【事例2】Web会議で就活のアドバイスをもらうはずが、50万円のプログラミングスクールを契約させられた
就活の情報収集をする目的で作成したSNSのアカウントに、フォロワーの1人から、「エントリーシートの添削を手伝う」と連絡があり依頼した。添削では、私に不足している部分ばかり分析され、「あなたは理論的思考力が足りない。プログラミングの勉強をするべきだ」と言われ、「フォロワーの会社の上司から一度話を聞くように」と勧められた。
Web会議に誘われて3人で話をすると、「あなたには当社のものが最適だ」と突然約50万円のプログラミングスクールの勧誘を受けた。お金がなく支払えないため、親に相談したいと伝えたが、「そんなことは事後報告でよい。先に親に話すと絶対に反対される。将来必ず役に立つ」などと言葉巧みに勧められて契約した。
しかし、パソコンの作業は苦手で、プログラミングの技術を習得しても将来どのように生かせるのかわからず、やめたい。代金は預金と親からの仕送りを足して現金で振り込んだ。契約書面はもらっていない。騙されたと思うので返金してほしい。(2022年10月・20歳代女性)
「100%内定!」「必ず役に立つ」など断定的文句に惑わされない
国民生活センターではこうアドバイスしている。
(1)無料カウンセリングのつもりでWeb会議に参加しても、いきなり高額な契約の勧誘を受けることがある。無料カウンセリングの内容や有料サービスの勧誘の有無について、事前によく確認したうえで参加を判断しよう。
(2)「相談に乗ってあげる」「エントリーシートを添削してあげる」など、SNSで知り合った人からの一見親切な誘いは、高額な契約の勧誘が目的の恐れがあり、注意しよう。
(3)「100%内定」「必ず役に立つ」といった断定的な説明や、「このままでは就活に失敗する」などと不安をあおる言葉に惑わされないこと。
(4)「お金がない」と断ると、事業者から「クレジットの契約や借金をしてでも支払うように」と指示される場合がある。断るときは、「契約しない!」とはっきり意思を伝えよう。
(5)Web会議や電話で無料カウンセリングを受けて、有料のセミナーを勧められて契約した場合には、クーリング・オフ(一定の契約に限り、一定期間無条件で契約を解除できる制度)ができる場合がある。
また、事業者が社会生活の経験が乏しい就活生に対し、不安をあおって契約を結んだケースも、消費者契約法により契約を取り消すことができる場合がある。さらに、同法の改正により、今年(2023年)6月1日以降に契約したケースは、「親に相談したい」と申し出たのに相談を妨害した場合も取り消しの対象になる。
そういうわけなので、国民生活センターでは、
「不安に思った場合は、早めに消費者ホットライン(電話番号188=いやや!)に相談してください」
と呼びかけている。(福田和郎)