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建設業2024年問題 現場監督・所長への調査...デジタル未対応の将来、不安ある「65.5%」に!

   建設現場の2024年問題と建設DXの推進は喫緊の課題と言われているが、現場を管理する現場監督・所長はどう考えているのだろうか?

   野原ホールディングス(東京都新宿区)は建設業界従事者1000人に実施した「建設DXに対する意識調査」(2023年4月6日発表)、「建設業界従事者のデジタルツール意識調査」(2023年4月13日発表)に続いて、5月17日に建設現場の現場監督・所長(現場代理人)に対象者を絞った、「建設現場の業務デジタル化の意識調査」結果を発表した。

   調査では、現場監督・所長が最も深刻と考える業界課題は「人手不足」(63.3%)で、建設業界従事者1000人調査の56.5%を大きく上回っており、他の職種の結果と比較しても突出していることがわかった。

  • 現場監督や所長のデジタル化の悩みも大きい(写真はイメージです)
    現場監督や所長のデジタル化の悩みも大きい(写真はイメージです)
  • 現場監督や所長のデジタル化の悩みも大きい(写真はイメージです)

「施工・専門工事」と「施工管理」にデジタル化の遅れ 人手不足をどう乗り切る?

   この調査は、2023年2月15日から22日までの間、全国の現場監督・所長の267人から有効回答を得た。調査はインターネット調査をゼネラルリサーチに委託したものとなる。

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   はじめに、建設業界1000人を対象にした「建設業界の最も深刻な課題」を現場監督・所長267人を比較すると、順位は「人材不足」、「高齢化による技術継承」、「円安などによる建材人件費の高騰」と同じ結果が出た。

   しかし、数値を見てみると、従業者においては「人材不足」は「56.5%」であるのに対して、現場監督・所長は「63.3%」と7.2ポイント高いことがわかり、より強く現場監督と所長は、業界の課題を痛感していることがわかる。

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   職種別の人材不足を感じる人の割合を見てみると、施工を管理する「現場監督・所長」は「63.3%」と高く、購買・調達の「53.7%」と比較すると10ポイント近くの差がついている。

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   また、「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るという不安がある」人の割合を職種別にみたところ、現場監督・所長は設計(68.9%)に次いで高い「65.5%」という結果となった。

   なお、設計の業務は建設業界従事者の「デジタル化による生産性向上、業務効率化が進んでいる思う業務プロセス」の1位(46.6%)にランクインしている。

   一方、現場監督・所長が従事している「施工管理」は従事者のランキングでは3位(30.75%)に入っている。

   しかし、同じ「デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れていると思う業務プロセス」でも3位(23.1%)に入っていることから、会社・業界・現場によって環境が二極化している可能性がある。

   いずれにしても、他の職種に比べても、現場監督・所長はデジタル化対応への危機感を強く感じているのだろう。

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   続いて、「デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れていると思う業務プロセス」を2つの調査で比較してみると、「施工・専門工事」(41.2%)、「施工管理」(31.5%)と突出して高い結果になり、プロセスのデジタル化による生産性向上の遅れを痛感しているようだ。

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   つぎに、「施工管理」を「デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れていると思う業務プロセス」だと回答した割合を職種別の結果について同社では「他の職種に比べて、現場監督・所長(現場代理人)の数値が高い結果となりました。自らが携わっているからこそ、遅れを痛感しているとも読み取れます」と指摘している。

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   引き続き、現場監督・所長(現場代理人)が思う、「デジタル化できれば生産性向上に繋がると思う業務プロセス」は、建設業界従事者1000名の結果に比べ、「施工管理」の数値が格段に高く、また「施工管理」に含まれる「安全管理」業務も4位に上がっている。

DX推進できない理由 1位「デジタルにできない業務」、2位「データ更新が面倒」、3位「運用までの煩雑さ」

(野原ホールディングスの作成)
(野原ホールディングスの作成)

   最後に、デジタル化や業務効率化が進まない理由では現場監督・所長の回答では、「デジタル化できない作業が多い」(57.3%)、「現場での変更が多くデータ更新が面倒」(36.7%)、「導入から運用までの煩雑さ」(28.1%)が順位の上に上がった。

   しかし、中位には「ツールの使い方を覚えるのが面倒」(24.3%)、「従来のやり方が一番早いと思っているから」(22.1%)なども挙がっており、DXの推進に当たっては使いやすいインターフェイスや効果を実感できるデジタルツールなども必要なことがわかる。

   野原グループCDO(最高デジタル責任者)の山﨑芳治氏は次のように調査の総括をしている。

「『施工管理』業務を担う現場監督・所長の皆さまが、より強く『人材不足』を業界課題として感じておられること、施工管理や安全管理業務の『デジタル化による生産性向上』に期待をお持ちであることを、本調査結果から改めて認識できました。
また、現場監督・所長の皆さまが、現場に深く携わっているからこそ、『施工トラブル(58.1%)』を『デジタル化が難しいと思う業務』の1位に選んでいることも納得できました。これは、建設業の特徴の一つに、個別生産(固有の土地に密着して建設するので、同じ内容のものがない)があることが影響していると思います」
「しかし、『そういうものだから』と言って、今までと同じ手法を継続していては何も変わりません。現在、国と建設業界は官民一体で、人手不足を補い、生産性を高める手段として、建設DXに取り組んでいます。
今後、徐々に設計段階から施工段階へとBIM活用が拡張していくと予想しています。これに伴い、施工管理の在り方も、アナログからデジタルへ、特にBIMを活用することで、大きく変えていくことができます」