債務上限問題は投資家にとって、長い目で見ればチャンス?
また、債務上限問題は投資家にとっては、チャンスかもしれないという見方を示すのは野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「米債務上限問題と米金融市場の行方」(5月16日付)のなかで、米国市場の緊張感に欠ける動きをこう指摘する。
「米国債のデフォルトリスクを警戒し、米1か月国債利回りは直近で大きく上昇しています。また、米国債市場でデフォルトリスクを織り込んで取引されるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の保証料率がリーマン・ショック以来の水準にまで上昇するなど、米国債のデフォルトに備える動きも一部でみられます」
「投資家の不安心理を表す米VIX(ボラティリティ・インデックス、いわゆる恐怖指数)は17.12(5月15日時点)と、楽観・悲観の分かれ目である20を下回っており、米債務上限問題に対する米国株市場の警戒は低いといえます【図表2】」
恐怖指数「VIX」は「20」以下が安定、「30」だと警戒領域、「40」以上になるとパニック状態といわれる。たしかに、【図表2】をみると、VIX指数は、2011年の混乱時や、2020年のコロナショック時などに比べると、はるかに安定している。
そこで、石黒氏は長い目で見ればチャンスだとして、こう述べる。
「債務負債問題が難航の末決着した後、格付会社による米国債の格下げが行なわれた2011年には、米国株は大きく下落し、安全資産である米国債が買われる などリスクオフの流れとなりました」
「ただ、2011年の市場の混乱は一時的で、後で振り返れば、そこが米国株のエントリーポイントとなりました【図表2】。交渉難航が続けば、リスクオフの流れが一時的に強まる場面もありそうですが、米大統領選を来年に控えるなかで、米債務上限の交渉が何らかの形で妥結する可能性が現時点では高いといえるのではないでしょうか」