エルニーニョの「異常気象」で、想定外の打撃を受ける?
ところで、想定外の自然現象によって日本経済は今夏、思わぬダメージを受けるかもしれない、と予想するのは第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏だ。
永濱氏のリポート「エルニーニョが経済・金融市場に及ぼす影響~冷夏で景気も曇る可能性。農産物の価格高騰で値上げラッシュに拍車も~」(5月16日付)によると、今年夏から4年ぶりに「エルニーニョ現象」が発生する可能性が高まっているという。気象庁が5月12日に発表した。
「エルニーニョ」とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域における海面水温が、平年より高くなる状況が1年ほど続く現象だ。エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。日本では「冷夏」や「天候不順」に見舞われる可能性が高い。
永濱氏は、「1990年代以降のエルニーニョの時期には、通常の1.6倍以上の確率で景気後退局面に入っている」として、エルニーニョの発生と景気後退局面の相関グラフを示した【図表4】。
冷夏や天候不順になると、外出を控えるため「教養・娯楽」「交際費」「諸雑費」といった支出に悪影響を及ぼす。また、「夏物衣料」やビール・清涼飲料などの「食料費」の支出を押し下げる。さらに、農作物の生育を阻害して冷害をもたらし、農業に大きな打撃を与える。
永濱氏は、特にひどかった1993年のケースをこう紹介している。
「実際、93年の景気後退局面においては、景気動向指数が改善したことを根拠に、政府は93年6月に景気底入れを宣言したが、円高やエルニーニョ現象が引き起こした長雨・冷夏などの悪影響により、景気底入れ宣言を取り下げざるを得なくなった」
「93年と言えば、日本は全国的に記録的な冷夏に見舞われ、特に東京の平均気温は平年を2.6度も下回った」
そして、こう結んでいる。
「エルニーニョが発生したからといって、必ず冷夏になるとは限らない。ただ、今後の世界の気象次第では、足元で好循環の兆しが出てきている日本経済に思わぬダメージが及ぶ可能性も否定できない」
「特に、足元の個人消費に関しては、30年ぶりの賃上げやコロナからの経済正常化などにより、夏場にかけて回復するとみられている。しかし、今後の個人消費の動向を見通すうえでは、エルニーニョによる天候不順といったリスク要因が潜んでいることには注意が必要であろう」
(福田和郎)