輸出環境の悪化で、今秋から日本経済は景気後退に入る?
一方、世界的な経済悪化の影響を受け、日本経済も今年後半には景気後退局面に入るのではないか、とみるのは野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「低空飛行が続く国内経済(1期GDP見通し):海外経済悪化で年後半に後退局面入りか」(5月12日付)のなかで、米国、日本、ユーロ圏、中国という主要国・地域の製造業景況感(PMI)を比較したグラフを示した【図表3】。
PMIは50が判断の分かれ目とされている。この水準を上回る状態が続くと「景気拡大」、50を下回る状態が続くと「景気減速」を示す。これを見ると、ユーロ圏の景気後退が一番顕著だが、いずれの国・地域も足元で50のラインを下回っていることがわかる。
そこで、木内氏はこう説明する。
「主要国・地域では製造業の弱さが目立っている【図表3】。3月に上振れた中国の製造業の景況感は、4月には再び改善と悪化の判断の分かれ目である50を3か月ぶりに下回った。ゼロコロナ政策解除直後の楽観論は後退し、再び先行きの経済に慎重な見通しが出てきている」
「主要国・地域の中で特に足元で弱さが目立つのは、ユーロ圏の製造業の景況感である。4月の数値は、コロナショック直後の2020年5月以来の水準まで一気に低下した」
「米国では、急速な金融引き締めの影響に加え、3月以来の銀行不安による資金ひっ迫傾向が、企業活動の強い逆風となっている。米国経済は今年7~9月期から景気後退局面に陥り、これを契機に主要国経済も後退局面に陥ると予想する」
そして、こう結んでいる。
「日本経済は、4~6月期に一度踊り場を迎えて成長率がやや持ち直した後、輸出環境の悪化によって7~9月期、あるいは10~12月期に景気後退局面に陥ると見ておきたい。輸出環境が本格的に悪化すれば、足もとで比較的安定している個人消費だけでは、日本経済は支えきれない」