上場企業で「初任給引き上げ」7割は多い、少ない?
2023年1月4日、岸田文雄首相は年頭会見で経済界に対して「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と述べ、物価上昇分を超える賃上げを迫った。
3月の消費者物価指数(総合指数)は前年同月比で3.2%の上昇で、今年の春闘で大幅な賃上げが実現しない限り、国民の生活水準が低下するのは確実視されていた。
ただ本来、賃金は企業の生産性の向上があってこそ実現するもので、政府が賃上げを要請したからといって、容易に上がるようなものではない。生産性の向上がないまま名目賃金を引き上げれば、企業の利益は減少する。
利益の減少に、非正規労働者の拡大による実質的な賃下げや、下請け企業への過剰な値引き要求が起こるといった事態に陥る可能性すらある。
初任給の引き上げは、人手不足の中で「優秀な人材を確保したい」という企業の採用事情の表れでもあるが、引き上げられる企業は「まだ余力がある」といってよい。
調査によると、上場企業でも「一部据え置き」と答えた企業が3,2%、「全学歴で据え置いた」企業が26.1%にのぼった。
上場企業の3割近くが「引き上げられない」でいるのだから、中小企業の改定状況は「推して知るべし」か。
なお、調査は2023年3月下旬に東証プライム市場に上場する1784社に調査票を発送。併せて電話で取材を実施。4月11日までに回答のあった157社を集計した。