2016年に買収の「半導体設計」アーム社、年内に米ナスダック上場目指す...1兆円調達か
今後の見通しはどうか。
SVFは人工知能(AI)分野など世界の新興企業に投資し、その数は現在、約440社にのぼる。
しかし、ベンチャーは資金力が乏しく、株価下落や景気悪化の局面では、経営が大きく影響を受けることが少なくない。SBGの投資先も、ここ数年の経済環境の激変の影響をもろに受けてきた。
このため、SBGは守りを固め、SVFを通じた新規投資は抑え、有利子負債の返済や自社株買いを優先してきている。
そのうえ、ここにきて、対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」など生成AIが話題を集め、関連企業が注目されているが、現状ではSBGへの追い風にはなっていない。
それでも、決算発表の会見で後藤芳光・最高財務責任者(CFO)は「従来通りの守りを固める戦略でいいのか、攻めを両立すべきか、検討すべき段階」と述べ、反転攻勢に出るタイミングを計っている姿勢をにじませた。
アリババ株が底をついた今、投資と財務のバランスを考えるうえでカギを握るとみられるのが、半導体設計の世界的企業アーム(英国)だ。
半導体の「設計図」を手掛け、世界中の半導体メーカーが顧客。省エネ性能などに強みがあり、スマートフォン向け半導体市場の9割がその設計になる。
SBGは2016年にアームを買収したが、買収価格は当時の日本企業による海外企業の買収として最大規模の3兆3000億円だった。時価はというと、英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は少なくとも300億ドル(約4兆1000億円)との見方を報じている。
SBGは23年4月29日、米国市場でのアームの新規株式公開を米証券取引委員会に申請しており、年内の上場を目指している。
売り出し価格、売り出す株数などは未定だが、市場関係者の間では、米巨大IT企業などが上場する米ナスダック市場に上場し、株式発行により1兆円以上を集めるとの見方が出ている。
上場により、資金を得るだけでなく、保有株を担保として活用しやすくなる。SBGがファンドの投資再拡大に動くタイミングで、アームの上場は大きな力になると期待されるゆえんだ。