自分の会社で不正、あなたはどうする! 調査で判明、全従業員の14%が不正に関与・目撃、半数以上が告発 でも、泥をかぶるのは部課長...社長は?

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   毎日のようにニュースで取りあげられる企業の不正や不祥事。自分の会社で不正があったら、あなたはどうする?

   そんななか、人材総合サービスの「パーソル総合研究所」(東京都港区)が2023年4月28日、「企業の不正・不祥事の実態と防止・改善策に関する調査」を発表した。

   4万6000人の調査でわかったのは、約14%の人が不正に関与・目撃した経験があること。会社の「悪」を前にどう行動したか。あなたも参考にしてはいかが。

  • 不正は許さん!(写真はイメージ)
    不正は許さん!(写真はイメージ)
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働く人の7人に1人が、会社の不正に関与・目撃

   この調査は、パーソル総合研究所が同時に発表した全97ページにもおよぶ報告書「企業の不正・不祥事に関する定量調査」のエッセンスを7ページにまとめたものだ。

   調査は、全国の20歳~69歳の就業する男女4万6465人が対象だ。まず、「会社の不正に関与したり、見聞きしたりしたことがあるか」を聞くと、「関与あり・目撃あり」(5.3%)、「関与あり・目撃なし」(0.7%)、「関与なし・目撃あり」(7.5%)を合わせ、全体の13.5%が関与・目撃した経験があると答えた【図表1】。

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(図表1)不正の関与・目撃率(パーソル総合研究所の作成)

   働く人全体の約7人に1人が、直接、間接を問わず、会社の不正に「関わっていた」わけだ。

   具体的には、どんな不正に関与・目撃した経験があるのか。フリーコメントからみると――。

   最も多かったのは「労務管理上の問題」だ。こんな事例があった。

「日常的なサービス労働が当たり前になっている。実際にはシフト上の時間数より多く働いているのに、その分はただ働きである。シフト上の出勤時間では開店前の準備が間に合わないため、自発的にシフトより1時間以上早く出勤し作業をしている。開店時間は待ってくれないため、シフト通りに出勤してもし間に合わなければ、結局は自分たちの首を絞めることになる。自発的にサービス労働をせざるを得ない状況である」(50代女性、飲食店、関与者)
「医師によるコメディカル(医師を除く医療従事者の総称)へのパワハラ。医師は病院内では何をしても許されるという暗黙の了解を生んでしまっているため、公にされない。上司等へ報告しても医師の機嫌をとるように言われるだけで何も改善がない」(30代男性、医療・福祉業、目撃者)

他社の特許案件を無断採用、談合、立会検査の隠蔽...

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会計書類の捏造(写真はイメージ)

   次に多いのが、正規の法令を守らない「手続き違反」だ。

「他社の特許案件を調査しないまま自社製品に採用した。現在、仕様変更していて、結果として問題にはなっていない」(60代男性、製造業、関与者)
「製品の補修・検査の作業方法が立会検査で分からないように隠している(キズなどを補修材で修理し、検査員に分からないようにしている)。作業工程の書類に『補修箇所なし』と記載している」(50代男性、製造業、関与者)

   組織全体で「不正な利益を追求」したり、隠蔽したりする事例も多いようだ。

「ポスティングの業務で、前の担当が物理的に投函できないない集合住宅で架空の投函記録を作成していた」(50代男性、その他業種、目撃者)
「地方へ出向中のキャリア官僚が、職務上知りえた出向先の秘密を出向元の官公庁へ漏洩していた」(60代男性、教育事業、目撃者)
「建設入札談合の席に出席して、その実態を見た!」(60代男性、建設業、目撃者)

   個人情報などが漏洩する「不適切表現・流出」も後を絶たないようだ。

「個人情報を含む文章情報を自動解析する実験、実証のため、契約を交わしメーカーに提供する際、個人情報、メルアド、会社情報を暗号化するよう組織、個人に対し指示したが、暗号化も職制のチェックもなされず、大量の文章データがメーカーに渡ってしまった。メーカーがこの情報を実証実験のみに使用してくれたので大事には至らなかった。事故にもなっていないことから摘発を飲み込んだ」(60代男性、製造業、目撃者)
「社外に出してはいけないデータが流出したが、もみ消した」(40代男性、製造業、目撃者)
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水増しのイメージ(写真はイメージ)

   一方、犯罪としか言いようがない「個人の不正」の事例もある。

「車椅子に忘れられていた手提げバッグの中に入っていた財布からお金をくすねた。その中に、運転免許証、クレジットカード、ポイントカードなども入っていたが、すべてが見つからないようにハサミで切り刻み、捨てた」(60代男性、小売業、関与者)
「寄付による収入の計上漏れが発覚したが、修正計上する手間とコストのほうが大きいと判断して、知っている人だけで横領した」(50代男性、その他業種、関与者)

泥をかぶるのは中間管理職、トップはいつも「クリーン」なのか?

   こうした「不正の関与・目撃者」を企業の職位別に調べると、「部長相当」(22.4%)の割合が最も高く、次いで「係長相当」(19.6%)、「課長相当」(19.5%)、「取締役相当」(18.0%)となった。

   興味深いのは「一般社員・従業員」(12.9%)よりも、「代表取締役・社長相当」(11.5%)のほうが低いことだ。日本の企業では、泥をかぶるのは中間管理職が多く、せいぜい取締役クラスまでで、トップはいつも「クリーン」でいるということか。不正に対する認識、責任が甘すぎると言われても仕方がないだろう【図表2】。

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(図表2)職位別不正の関与・目撃率(パーソル総合研究所の作成)

   では、どういった業界、組織で不正が発生するリスクが高いのか。【図表3】は、縦軸に「個人の不正許容度」、横軸に「組織の不正許容度」をとり、不正発生リスクの高さを業界ごとに相関グラフで描いたものだ。

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(図表3)個人と組織の不正に発生リスクが高い業界(パーソル総合研究所の作成)

   これをみると、「医療、福祉」「運輸業、郵便業」「建設業」で不正が発生するリスクが高く、逆に、「学術研究、専門・技術サービス業」「情報通信業」「金融業、保険業」で低いことがわかる。

   さて、不正を目撃したらどうしたらよいだろうか。目撃者に「どう対応したか」を聞くと、「何らかの対応をした」(53.9%)人が「特に何もしなかった」(46.1%)人を上回った。まだまだ、正義感を持って仕事をする人のほうが多いことに救いを感じる。

   具体的な対応を聞くと(複数回答可)、「社内の上司に報告した」(36.2%)が最も多く、次いで「社内の同僚に相談した」(25.6%)、「家族や社外の友人に相談した」(12.3%)、「人事部長など社内の担当部署に報告した」(11.4%)と続いた【図表4】。

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(図表4)不正を目撃してどう対応したか(パーソル総合研究所の作成)

   意外にもというべきか、イマドキの社会現象である「SNSなどで不正の事実を拡散した」(1.1%)という人はわずかだった。

   一方、不正を目撃しながら何の対応をしなかった人たちは、なぜ黙っていたのか。理由を聞くと(複数回答可)、「自分が対応しても、改善の見込みがないと思った」(33.0%)で最も多く、「詳しい状況が分からず、確信が持てなかった」(26.4%)、「自分とは無関係であると思った」(22.5%)、「対応するのが面倒と思った」(16.9%)が続く【図表5】。

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(図表5)不正を目撃しても対応しなかった理由(パーソル総合研究所の作成)

   さらに、「対応したことが周りに知られ、労務上の不利益な扱い(解雇、降格等)を受ける恐れがあった」(16.4%)、「対応したことが周りに知られ、人間関係が悪くなる恐れがあった」(14.3%)といった残念な理由もあった。

穏便に処理せず、透明性高い調査と従業員の意見を聞くことが大事

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不正を見たと悩む写真(写真はイメージ)

   今回の調査を担当したパーソル総合研究所上席主任研究員小林祐児氏はこうコメントしている。

「企業がコンプライアンス対策として様々な施策を行っていても、大量の手続きや現場感の無い研修などは、対策を形式的に『こなす』意識を生み、不正防止につながっていないことが明らかになった。
不正防止のためのポイントは、まず目標管理の適正化やキャリア形成の整備によって、組織全体の不正風土の改善を図ること。また、一方通行的な説明だけでなく、議論やワークショップ、サーベイなど、従業員側の『意見の吸い上げ』を重視したコンプライアンス対策の重要性だ。
従業員側に『会社の悪い部分が明らかになってスッキリした』『自分の気持ちが話せた』といった理解や納得を引き出すことで、組織全体のコンディションの回復につながっている。
不正を防ぎ、不正発生から『立ち直る』ためには、事案をただ穏便に処理するのではなく、透明性高く調査を行い、従業員側の意見に耳を傾ける姿勢が重要になる」

   調査は、2023年1月30日~2月3日、全国の20歳~69歳の就業する男女4万6465人にアンケートを行なった。不正関与や目撃は、5年以内に限定。また、アンケートに協力した人の企業の業界は、総務省統計局の「労働力調査」の構成比に合わせ、業種(20分類)を割り付けした。(福田和郎)

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