泥をかぶるのは中間管理職、トップはいつも「クリーン」なのか?
こうした「不正の関与・目撃者」を企業の職位別に調べると、「部長相当」(22.4%)の割合が最も高く、次いで「係長相当」(19.6%)、「課長相当」(19.5%)、「取締役相当」(18.0%)となった。
興味深いのは「一般社員・従業員」(12.9%)よりも、「代表取締役・社長相当」(11.5%)のほうが低いことだ。日本の企業では、泥をかぶるのは中間管理職が多く、せいぜい取締役クラスまでで、トップはいつも「クリーン」でいるということか。不正に対する認識、責任が甘すぎると言われても仕方がないだろう【図表2】。
では、どういった業界、組織で不正が発生するリスクが高いのか。【図表3】は、縦軸に「個人の不正許容度」、横軸に「組織の不正許容度」をとり、不正発生リスクの高さを業界ごとに相関グラフで描いたものだ。
これをみると、「医療、福祉」「運輸業、郵便業」「建設業」で不正が発生するリスクが高く、逆に、「学術研究、専門・技術サービス業」「情報通信業」「金融業、保険業」で低いことがわかる。
さて、不正を目撃したらどうしたらよいだろうか。目撃者に「どう対応したか」を聞くと、「何らかの対応をした」(53.9%)人が「特に何もしなかった」(46.1%)人を上回った。まだまだ、正義感を持って仕事をする人のほうが多いことに救いを感じる。
具体的な対応を聞くと(複数回答可)、「社内の上司に報告した」(36.2%)が最も多く、次いで「社内の同僚に相談した」(25.6%)、「家族や社外の友人に相談した」(12.3%)、「人事部長など社内の担当部署に報告した」(11.4%)と続いた【図表4】。
意外にもというべきか、イマドキの社会現象である「SNSなどで不正の事実を拡散した」(1.1%)という人はわずかだった。
一方、不正を目撃しながら何の対応をしなかった人たちは、なぜ黙っていたのか。理由を聞くと(複数回答可)、「自分が対応しても、改善の見込みがないと思った」(33.0%)で最も多く、「詳しい状況が分からず、確信が持てなかった」(26.4%)、「自分とは無関係であると思った」(22.5%)、「対応するのが面倒と思った」(16.9%)が続く【図表5】。
さらに、「対応したことが周りに知られ、労務上の不利益な扱い(解雇、降格等)を受ける恐れがあった」(16.4%)、「対応したことが周りに知られ、人間関係が悪くなる恐れがあった」(14.3%)といった残念な理由もあった。