日本の総人口は47年後の2070年には2020年時点の人口から31%も減少、1億人を割り込み8700万人にまで減少する――。
国立社会保障・人口問題研究所は2023年4月26日、「日本の将来推計人口」を発表した。今回は2回にわたって、「日本の将来推計人口」から将来の日本の姿をみていこう。
3月9日から7回にわたって筆者は、総務省統計局の「統計でみる都道府県のすがた」を使い、現在の日本の姿を取り上げた。【【俯瞰して見る日本(1)】47都道府県別に見る「人口減少」社会の実態(鷲尾香一)】
そこには、危機的なまでに進む日本の少子高齢化があった。それでは、少子高齢化による日本の人口は、今後、どのような状況になっていくのだろうか。
出生者数...2070年の中位の推計は50万人まで減少、低位の推計は34万4000人
「日本の将来推計人口」とは、出生、死亡、国際人口移動について、実績値の動向をもとに仮定を設け、日本全域の将来の人口規模、男女・年齢構成の推移について推計を行ったものだ。対象は外国人を含む日本に3か月以上にわたって住んでいる、または住むことになっている総人口だ。
今回の推計では20年までの実績値をもとに、20年10月1日現在の男女別年齢各歳別人口(総人口)を基準人口として、21年から70年までの人口について推計している。推計は高位、中位、低位の3パターンで行われているが、今回は中位の推計を軸に取り上げる。
人口の増減には、出生数と、死亡数の差による自然増減と、人口の流入数と流出数の差による社会増減がある。もっとも、社会増減は推計が難しいため、将来推計人口は自然増減をベースに行われている。 そこで、まずは自然増減のベースとなる出生と死亡の推計からみていこう。
一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均である「合計特殊出生率」は、実績見込みである2021年の1.30から2023年に1.23にまで低下する。
これは新型コロナウイルスの影響が加味されたもので、2028年までは新型コロナによる婚姻率の低下や晩婚化、晩産化の影響により、1.2台での推移が予測されている。
2070年までの推計の中では2023年の1.23が最も低く、2070年には1.36にまで回復する推計となっている。ただ、1.36は前回の「日本の将来推計人口」が行われた2015年の2065年時の推計1.44からは大きく低下している。
ちなみに、低位の推計では特殊合計出生率は2023年に1.08と1.10を割り込み、2070年は1.13となっている。筆者はこの低位の方が実現する可能性が高いと見ている。
2022年についに80万人を割り込んだ出生者数は、2043年に70万人を、2052年に60万人を割り込み、2070年には50万人まで減少すると予測されている。(グラフ1)
出生者数の低位推計では、2023年に70万人、2040年に60万人、2050年に50万人、2059年に40万人を割り込み、2070年には34万4000人と予測されている。筆者は出生数についても、中位よりも低位の可能性が高いと考えている。
2026年以降、子どもの半数以上がひとりっ子になる予測
さて、出生数を少し違った角度からみてみたい。それは夫婦における子どもの数だ。
2022年の出生数は78万7000人だが、このうち第1子は36万8000人、第2子は30万1000人、第3子は11万2000人となっている。割合は、第1子46.8%、第2子36.0%、第3子13.1%となる。
第1子は2028年には39万2000人にまで増加するが、その後、2051年には30万人を割り込み、2070年には25万1000人まで減少する。
これに対して、第2子は2023年の29万3000人がピークで、2046年に25万人、2060年に20万人を割り込み、2070年には18万5000人にまで減少する。
そして、第3子は2022年にピークを過ぎ、2025年に10万人を割り込み、2070年には5万2000人にまで減少すると予測されている。(グラフ2)
これを割合でみると、第1子は2023年の44.4%から、その後は総じて50%台で推移、第2子は2023年の38.5%から、その後は36%後半から37%前半で推移し、第3子は2023年の13.3%から、その後は10%台前半で推移する。
つまり、2026年から日本では、子どもの半数以上がひとりっ子になると見られている。
少子化は生涯独身者の増加や晩婚化により、子どもを産む女性が減少するだけではなく、1人の女性が生む子どもの数が1人に近づくことが予測されている。
死亡者数...2040年には166万5000人まで増加してピークとなる見込み
さて、自然増減のもう一つの要素である死亡者数と死亡率はどのように推移するのか。
死亡者数は2022年の153万2000人から2040年の166万5000人まで増加してピークを迎え、その後は減少に転じて、2070年には152万1000人にまで減少する。
2040年の死亡者数が最も多くなるのは、第1次ベビーブームである団塊の世代と第2次ベビーブームが、65歳以上の高齢者として重なる次期にあたるためだ。
一方、死亡率(1000人あたりの死亡者数)は2022年に12.3%から上昇を続け、2070年には17.5%まで上昇する。死亡者数が2040年にピークを迎えても、死亡率が上昇を続けるのは、高齢者の比率の上昇が続くだめだ。(グラフ3)
このように、少子化の進展と多死社会の到来により、日本の人口の自然増減は減少の道をスピードアップして進むことになる。次回は高齢化の姿を取り上げる。【第2回につづく】