雇用を流動化し、ダイバーシティを確保
最終章の「提言」では、これら5つの罪は、相互に関係し合って電機産業の凋落を後押ししたと指摘。本質的な議論ができなかったのは、ダイバーシティを欠いた同質性の高い集団に原因を求めている。
ダイバーシティを高めるには雇用の流動化が必要だ。解雇条件の緩和は、正社員にとってもメリットがあると訴えている。
最大の効果はエンゲージメントの向上で、自身の体験を披露している。会社に残るか、事業とともに転籍するか選択を迫られた。事業を選んだ桂さんは、「自分が選んだ仕事」という意識が高まったそうだ。
これを裏付ける神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学の八木匡教授による幸福度に関する研究を紹介している。そして、自己決定権を取り戻すことで、エンゲージメントは高まると見ている。
解雇条件の緩和は、終身雇用と新卒一括採用の終焉につながり、さらに失業率の上昇などの弊害も避けられない、としている。
そして、電機産業こそ、率先してこのような改革に取り組むべきだと。解雇条件の緩和という提言には賛否が分かれるだろうが、「腹をくくる必要がある」と結んでいる。(渡辺淳悦)
「日本の電機産業はなぜ凋落したのか」
桂幹著
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