バッテリーの性能アップ、リサイクル...課題は多く
ところで、バッテリーの持続時間はEVの充電事情にも関わる。
IBVの分析によると、ほとんどの消費者が300マイル(483キロメートル)を上回るEVの走行可能距離を求めているが、2021年の米国市場におけるその中央値は234マイル(377キロメートル)だった。
バッテリー性能は時間とともに低下し、それに伴い充電回数が増え、充電時間が短くなると、バッテリーの寿命やEVの残存価格に影響が及ぶ。また、発熱などの安全性の問題も気になるところ。
さらに、原材料の調達、製造過程で排出される温室効果ガス、廃棄バッテリーのリサイクルなどに伴う環境負荷といった課題への対応も考慮しなくてはならないと、指摘している。
EVの充電インフラの整備には多大な労力が伴うため、自動車メーカー幹部は、「当面は充電手段が十分な水準に到達するとは考えていない」としているが、回答した経営幹部の89%が、2040年までには自国のEV車向けの充電インフラが整備されると予測している。
ただ、「2030年までに、十分な充電設備が利用できるようになると予測する自動車メーカーの幹部は13%に過ぎない」と、IBVはみている。
なお、調査はIBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Value(IBV)が、世界9か国1501人の自動車業界のエグゼクティブへのインタビューと7か国1万2663人を対象とした消費者調査をオンラインで実施した。
経営幹部の内訳は、74%は執行役員またはシニア/エグゼクティブ・バイスプレジデントで、26%はディレクター。そのうち半数はグローバル統括担当で、半数は地域統括担当だった。また企業の内訳は、従来の自動車メーカー(22%)、EVメーカー/ブランド(17%)、部品サプライヤー(31%)、充電ハードウェア/ソフトウェアや充電スポットを扱うエコシステム内プレーヤー(30%)だった。職種は、戦略・統括経営、財務、研究開発、製造、調達、販売・マーケティング、カスタマーサービス・アフターセールス、IT、規制・サステナビリティーが含まれる。