EV普及の決め手は社会インフラとしての充電設備
一方、今回の調査でEV変革を進めるに当たって対処すべき課題がいくつか浮き彫りになった。
(1)EVの購入動機、価格設定と所有コストについて、消費者の期待と業界幹部の認識との間に乖離があること
(2)EVが広く普及するために不可欠な、充電インフラとバッテリーのライフサイクルをサポートするためのエコシステムの連携強化が必要なこと
(3)自動車メーカーとして、新たにどのオペレーション領域を社内で強化し、どの領域を他社と協業すべきか、継続的に評価する必要があること
――がそれだ。
さらに、EV購入の意思決定に関わる要因について、自動車メーカーのエグゼクティブと消費者のあいだでは見解に相違があることもわかった。
調査によると、EVの購入価格は消費者にとって最も重要な要素の一つで、バッテリーの持続距離よりも重要視されていることがわかった。しかし、自動車メーカーの経営幹部の認識と消費者の希望は一致しない。
経営幹部は、EVの購入価格が同等のエンジン車と比べてプラス5%から8%であれば、消費者に受け入れられると想定している。一方、消費者のEVへの関心は約6万ドルを境に低下する。
IBVの分析によると、米国における現状のEVの価格プレミアム(顧客がブランドに対して他の製品より余分に支払ってもよいと考える価格)は16%。自動車メーカーはEVの価格を引き下げる努力を続けているものの、消費者とのあいだには明らかなギャップが存在するとしている。
さらに、自動車メーカーはインフラとしての充電設備の設置とバッテリー機能の向上に、まだまだ頭を痛めることにもなる。
今回の調査で、自動車メーカーの経営幹部は消費者のEV購入の動機として、「充電設備への容易なアクセス」、「環境に対する配慮」、「自宅で充電が可能」などを想定していた。
一方、消費者は「自宅で充電が可能」、「維持費が少なくて済む」、「燃料費が少なくて済む」ことを挙げた。消費者の半数以上が社会インフラとしての充電設備の不足を心配していることがわかった。
家庭での充電が主な充電手段になると予測する消費者は、約半数に過ぎない。そのため、EVの普及に伴い、職場や買い物先、旅行先などの目的地の充電スポット、自宅近くの共有型充電設備、走行途中に急速充電できる設備などバランスよく整備される必要がある。
消費者と、政府や企業がより持続可能な交通手段を整備する力とのあいだには大きなギャップがある。【図2参照】