景気の変化はUターン就職や地元就職者の増減に影響するとされるが、2024年新卒の就活生はどのように考えているのだろうか?
マイナビ(東京都千代田区)が2023年5月9日に発表した「2024年卒大学生 Uターン・地元就職に関する調査」によると、2024年卒の学生で地元(Uターン)就職希望者は「62.6%」に上る実態が明らかになった。
地元就職の理由を見てみると、「両親や祖父母の近くで生活したいから」、「実家から通えて経済的に楽だから」などが挙がり、女子学生からは「これからの結婚出産を考えると、頼れる人が近くにいるのは安心」といった声が寄せられた。
Uターン就職の理由「両親や祖父母の近くにいたい」「経済的に楽」「地元の風土が好き」
この調査は、2023年3月20日から4月5日までの間、3月20日時点のマイナビ2024会員を対象に、2024年3月卒業見込みの全国の大学生、大学院生の3924人(内訳:文系男子684人、理系男子678人、文系女子1705人、理系女子857人)の有効回答を得た。
はじめに、地元(Uターン含む)就職希望者の推移を見てみると、「希望する(していた)」「どちらかというと希望する(していた)」の合計値は2024年3月卒の学生で「62.6%」となった。これは前年と同率となる。
また、同じテーマで同社が最初におこなった調査結果の2013年(67.5%)と比較すると、4.9ポイントの下降となる。コロナ禍直前で比較的景気のよかった2019年(59.2%)と比較すると、3.1ポイントの上昇となっている。
国内の経済状況の推移を有効求人倍率と合わせて経年で調査結果を追ってみると、景気が上昇傾向で求人倍率が比較的高い2017年以降は、都市圏の大手企業などで就職する意向が高まっていた。
一方、コロナ禍以降の経済状況が不透明で求人倍率が低下してからは、地元就職意向の高まりがみられる。
マイナビでは、
「現在は物価高などにより景気回復の実感が薄いことや、オンラインの普及により情報収集や選考参加しやすいことなどが、地元就職意向が高い水準を保っている背景にあると考えられる」
と分析している。
続いて、地元就職希望のある学生にその理由を聞いてみると、最多は「両親や祖父母の近くで生活したいから」(50.6%)となった。以下、「実家から通えて経済的に楽だから」(41.0%)、「地元(Uターン先)での生活に慣れているから」(38.1%)、「地元の風土が好きだから」(34.5%)、「仕事とプライベートを両立させたいから」(31.5%)の順となった。
自由回答を一部抜粋すると
「新卒で一人暮らしは経済的負担が大きい」(理系女子/長野県出身)
「将来結婚や子供ができた時のことを考えると、頼れる人が近くにいることは安心材料になる」(理系女子/福島県出身)
「まずは実家で暮らしながら仕事に慣れていきたい」(文系女子/宮城県出身)
などが挙がっている。
同社では
「一人暮らしで経済的な不安を抱えたくないという気持ちや、社会人になる時や将来家庭を持った時などライフスタイルが変化する時期は、家族や友人などがいる環境で生活したいという意識があると推察される」
と説明している。
オンラインセミナーが地元就職の追い風に! 57.9%は「影響ある」と回答
つぎに、地元就職を希望する学生に「セミナーの実施形式が参加申し込みに影響したことがある?」と尋ねてみると、「57.9%」の学生が「ある」と答えた。
詳細を見てみると「WEB参加可能だったのでエントリーすることにしたセミナーがある」学生は「45.0%」、「WEB参加不可(対面のみ)だったためにエントリーしなかったセミナーがある」学生は「24.6%」となった。
引き続き、Uターン就職希望者の就職活動の交通手段について集計してみると全体で一番多いのは「新幹線以外の鉄道」が「73.1%」、「地下鉄」が「57.0%」、「路線バス」が「36.7%」を占めた。
4番目に入った「新幹線」は「27.7%」となり、地域別でみると東北では新幹線の利用が「52.3%」となった。「飛行機(その他LCC)」は全体では「3.4%」となったが、北海道では「10.2%」、九州・沖縄では「9.7%」となった。
背景として同社は
「地域によっては費用の高い交通手段を用いて活動している学生が少なくないことが分かり、地元までの移動は金銭的にも大きな負担であることが見て取れる」
とまとめている。
最後に調査担当者は、以下のように総括している。
「Uターン就職を希望する学生にとってオンライン形式はセミナー申し込みの後押しになり情報収集において重要な手段になっていることが分かります。
コロナ禍での移動制限や感染対策を踏まえて普及したオンライン化ですが、コロナ禍が沈静化したあとも情報収集のしやすさという観点で重宝されているようです。
今後も対面・オンライン両方で情報発信するなど、学生が企業情報を知る手段を複数用意しておくことで、企業がより多くのUターン希望学生と接点を持つ機会に繋がりそうです」