トヨタ経営陣の焦り、現場へのプレッシャーに?
トヨタが品質管理を問われたのは、これが初めてではない。
2009年には米国などでトヨタ車の利用者から「意図しない急加速」などのトラブルが相次いで報告された。
トヨタは対策のため、延べ1000万台規模の大規模なリコール(回収・無償修理)や自主改修に踏み切ったが、信頼はがた落ちに。この年に社長に就任したばかりだった章男氏は、米議会の公聴会に呼ばれるなど責め立てられた。
「大規模リコール問題の際、トヨタは逃げない、隠さない、嘘をつかないと世界中のお客様に約束した。それにもかかわらず、グループ会社でこうした問題が発覚してしまった」
23年4月末の説明会で章男氏は、自ら切り出すかたちでリコール問題に言及した。09年の暗い記憶がいまも鮮明に残っていることをうかがえる。
なぜトヨタグループの不正がなくならないのか。
「トヨタは世界を代表する自動車メーカーになった。この過程でライバルを含め、多くの企業を傘下に収めていった結果、グループ内に目が届きにくくなった側面もある」
トヨタ関係者は背景にグループの巨大化があると指摘する。
別の見方もある。
ライバル企業の幹部は、電気自動車(EV)の普及など自動車をめぐる競争環境が激変する中、トヨタ経営陣の焦りが現場へのプレッシャーになったのではないかと見る。
「トヨタは2022年の自動車世界販売で首位を守ったが、EVの開発では米テスラはおろか、欧米の自動車大手にも遅れをとっている。こうした逆風が経営者の利益重視の姿勢を加速させ、追い詰められた現場が不正に走る要因になったのではないか」
トヨタグループは消費者の信頼を取り戻すことができるか。(ジャーナリスト 済田経夫)