経済活動の「命」資金の流れが、銀行と企業側双方で低下
とはいえ、FRBの利上げ停止を市場が歓迎するとしても、米銀行の貸出態度厳格化によるインフレ圧力の低下は、米国経済にとって歓迎すべきことなのか。
こうした米銀行の動きは、深刻な景気後退と金融不安の悪循環を招くリスクがあると警告するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「米銀の融資基準厳格化と企業の資金需要鈍化が同時進行(FRB銀行融資調査)」(5月10日付)の中で、現在、銀行の貸出態度(融資基準)の厳格化と、企業側の資金需要の鈍化が同時進行していると指摘する。つまり、経済活動の「命」である資金の流れが、供給側と需要側ともに勢いが低下しているわけだ。
いったい、どういうことか。
相次ぐ銀行破綻を受けてFRBは5月8日、銀行の貸出態度を調査した内容を公表した。その結果、厳格化は銀行破綻、経営不安が起こる前の2021年から急速に進んでいたことがわかった。その水準は、過去の景気後退期に匹敵しているという。
また、これとは別に、企業の資金需要の判断も大幅に悪化していることも判明した。その数値水準は、コロナショック時の数値をすでに下回り、リーマンショック時の水準まで低下している。金融環境が、銀行側と企業側双方の抑制的な行動のため悪化しており、経済の減速傾向を示しているわけだ。