銀行の「貸し渋り」でインフレ圧力が弱まっているが...
一方、CPIが2年ぶりに5%を切り、コアCPIも若干鈍化したことで、FRBが6月に利上げ停止に踏み切る確度が高まったとみるのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「米インフレ圧力残るも、米利上げは停止となる公算」(5月11日付)のなかでCPIだけでなく、もう1つの要因もインフレ抑制に働いている、と注目した。米商業銀行の貸出態度が厳しくなったことだ。
「昨年(2022年)後半から米商業銀行の貸出態度が急速に厳しくなってきたところに、足元で米金融システム不安への警戒が加わったことで、こうした点が今後の米インフレ抑制をサポートする可能性があります」
「過去を振り返ると、米商業銀行の貸出態度が厳しくなると、米景気の先行きに対する不透明感などから、米求人件数が大きく減少する傾向が確認できます【図表1】」
【図表1】は、米銀行貸出態度と米求人件数の関係を表わしたグラフだが、リーマンショック時(2008年)や、コロナショック時(2020年)の景気後退期には銀行貸出態度が厳しくなり、求人件数が急減していることがわかる。
このことから石黒氏はこう指摘する。
「米求人件数の減少は米雇用環境の軟化を通じ、米賃金インフレ圧力を和らげることにつながります。こうした点を踏まえると、サービス分野を中心に米国のインフレ圧力は今後一段と鈍化することが見込まれます。6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げが見送られ、FRBが利上げ停止を決定する可能性が高そうです」