リスクリングを支える3つの学び
さて、後半、いよいよリスキリングを支える3つの学びが登場する。
1つ目として、新しい仕事のやり方やスキルを獲得するために古いやり方を捨てる「アンラーニング」を挙げている。だが、これには抵抗もあるようだ。修羅場を経験するなど「限界」を感じることが、アンラーニングを進めるという。
2つ目は、「ソーシャル・ラーニング」。人を巻き込む学びのことだ。他者と真似し合い、教え合い、創り合い、高め合う。「やる気」は外からやってくる、と説明している。
3つ目はラーニング・ブリッジ。社会ネットワークでつながる「知」だ。ここでは、「世界で最も治安が良く、最も他者を信頼しない」という日本の特徴を論じている。それでは社会開拓力が育たない。「孤独」が学びを遠ざけているのだ。
リスキリングを単なる「お勉強」のように考えていた人には、ショッキングな内容だろう。
小林さんは、教育による「インプット」にばかり注力しても、職場でのスキル発揮という具体的な「アウトプット」は導かれない、と断言している。
そして、「工場モデル」ではなく、スキル獲得を通じて「変化の創出」を最大化するための仕組みを「変化創出モデル」と呼び、どう作るかを解説している。端的に言えば、社内のジョブ・マッチングの仕組みが大切だということだ。
「企業をキャリアの学校にする」。リスキリングは、単なる「お勉強」ではない。だからこそ、企業にとっての経営課題であるわけだ。(渡辺淳悦)
「リスキリングは経営課題」
小林祐司著
光文社新書
1012円(税込)