流通大手のイオンは首都圏で食品スーパーを展開するいなげや(東京都立川市)を連結子会社化する。セブン&アイ・ホールディングス(HD)も傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂と食品スーパー、ヨークを2023年内にも統合する方針。日本のスーパーマーケットに何が起きているのか、そしてどうなっていくのか。
いなげや、24年11月にイオン傘下のUSMHと統合へ...食品スーパーで国内首位に
イオンといなげやが2023年4月25日に合意し、発表した。
イオンがまず数百億円を投じ、いなげやへの出資比率(現在17%)を、2023年11月をめどで51%に引き上げ、連結子会社にする。さらに追加出資したうえで、24年11月にはイオン傘下の食品スーパー「マルエツ」などを抱えるユナイテッド・スーパーマーケットHD(USMH)と統合する。いなげやは上場廃止になるが、いなげやの屋号は維持するとしている。
株式取得の手法については、いなげやによる第三者割当増資やTOB(株式公開買い付け)などを検討している。USMHに統合する際のイオンの出資比率など細部は、今後詰めるという。
いなげやとUSMHが統合すると、単純合計で売上高は約9600億円と、同じイオン傘下で中四国地盤のフジ(23年2月期で7849億円)を抜き、食品スーパーで国内首位に躍り出る。
いなげやは1900年に東京都立川市で鮮魚店として創業し、戦後に食品スーパーに転換した。現在は首都圏4都県で食品スーパー「いなげや」など、約270店舗を展開。イオンは2002年、不動産会社からいなげや株を取得し、筆頭株主となっていた。
いなげやの足元の業績は芳しくない。23年3月期の連結業績見通しは、売上高にあたる営業収益が2520億円と前期から横ばい、純利益は29%減の17億円にとどまったとみられる。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要の反動減に加え、物価高による買い控えや光熱費などのコストアップが重荷になっている。
イオンは2015年にマルエツなど首都圏スーパーの系列3社をUSMHに統合したが、加わらなかったいなげやは残された「最後のピース」だった。総合スーパーが苦戦する一方で必需品に集中する食品スーパーは好調と言われてきたが、物価高など環境の厳しさが、いなげやの背中を押したかたちだ。