黒田前総裁時代の「検証」「点検」と、植田総裁の「レビュー」...どう違うのか?
デフレの長期化とともに、日銀の金融政策も、出口の見えない緩和の泥沼にはまった。次々と新たな緩和策を打ち出す一方で、政策の検証はおざなりにされてきた。
黒田東彦前総裁時代の日銀は2016年と21年に「検証」「点検」と称して、大規模な金融緩和にチェックを入れてはいる。しかし、いずれも確認作業はわずか数か月で終わった。黒田日銀はこの検証、点検の結果をもとに政策修正に踏み切っている。
ただし、あくまで緩和の大枠の中での修正であり、緩和路線そのものの是非に踏み込んで点検したわけではない。
植田・日銀は今回、あえて「レビュー」という新しいワードを使った。緩和方向の枠内での政策の微修正だった黒田・日銀時代の「検証」「点検」と混同されるのを避ける狙いがあるという。
「レビューには出口を見据えた植田総裁のしたたかな計算がある」
ある日銀関係者はこう指摘する。
4月の決定会合で植田・日銀はレビューを打ち出す一方で、黒田・日銀から引き継いだ現状の大規模な金融緩和策は当面、維持する方針を決めた。
日銀総裁の交替直後、ただちに金融政策の修正に踏み切れば、市場が混乱する恐れが強い。このため、足元の大規模緩和は据え置きつつ、レビューの形で出口に向けた知見を粛々と積み重ねる――植田氏の狙いがそんなところにあるというのが大方の見立てだ。