どの会社でも通用する!コンサルタントの「話す技術」とは?

   外資系のコンサルティング会社は、大学生の就職希望先として人気が高い。それはコンサルティング会社の出身者が、業界や業種を問わず、さまざまな場所で活躍していることがよく知られているからだ。

   本書「コンサル一年目が学ぶこと」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、元コンサルタントが、業界を問わず、役立つ普遍的なスキルをコンサルティング業界の仕事から抽出したものだ。

「コンサル一年目が学ぶこと」(大石哲之)ディスカヴァー・トゥエンティワン

   著者の大石哲之さんは、1975年生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に勤務。戦略部門のコンサルタントとして、事業戦略の立案、M&A、業務改革プロジェクトなどに従事した。現在は海外に拠点を移し、投資家として活動している。著書に「3分でわかるロジカルシンキングの基本」「過去問で鍛える地頭力」などがある。

結論から話せるようにする

   最初に登場するのが、「話す技術」だ。

   コンサルティング会社では、あらゆるものが、「結論から」のフォーマットに沿っていたという。報告書はもちろん、日常のメール、メモ書き、上司とのやりとり、すべて、結論から言うことが徹底されていた、と振り返る。

   そのメリットは、物事がシンプルに明確になることだ。それにより、短い時間で相手に必要なことを伝えることができる。

   大石さんも最初は慣れるのに苦労したそうだ。日本人の思考法は、経過があって、順番があって、最後に結論がくる。それを最初に結論がくるように逆転させるのだから、意識的にやって身につけていくしかない。

   結論から話す方法論として、PREP法を紹介している。PREPとは、次の用語の頭文字を並べたものだ。

Point=結論
Reason=理由づけ
Example=具体例
Point=結論の繰り返しで締める

   ふだん話すときも、思いついたことから喋るというクセをなくしてください、と大石さんが強調している。

   結論がもっとも意識されるべき場面は会議だ。会議は、結論から逆算して運営することを心掛けたという。

   外資系コンサルティング会社は、なにかと標語が多く、それが新人の行動の指針になっていたという。「Talk Straight(トーク・ストレート)」もそのひとつで、これは端的に喋る、簡潔に喋る、という意味と、率直に喋る、という意味が合わさったものだと理解してほしい、と説明する。

「言い訳はいい。質問にはイエス・ノーで率直に答える」

   質問にストレートに答えると、自然とコミュニケーションが図られて、問題の所在がわかる。相手は、その先の「なぜ?」や「どうして?」を聞いてくるからだ。

   また、「Talk Straight」には、言いにくいことでも、間違っていることは、上司やクライアントであっても率直に指摘することも含まれている。

   次に、数字というファクトで語ることを挙げている。

   クライアントははるかに年長者が多い。コンサルタントの新人の目標は、彼らと1対1でやりとりができるようになることだ。

   そのために必要となるのが、動かしようのない「ファクト」の筆頭である、「数字」で語ることだったという。それも難しい数字ではなく、売上、出荷の個数、コスト、利益率などの単純な数字だ。

   また、世界共通言語は、英語ではなく、論理(ロジック)と数字。

   論理があれば、議論はできるという。その一方で、クライアントへの究極の伝え方は、「徹底して相手の土俵に合わせて伝えること。社内用語など、相手の言葉、考え方、伝え方のクセを研究し、それに合わせて伝える」と書いてあるのも面白い。

ロジックツリーで考える

   次の章は、思考術である。ロジックツリーの使い方を説明している。ロジックツリーによる問題解決の基本は、以下の4項目だ。

1 論点を整理・分類する
2 各論点について数値分析をする
3 項目の重みづけをする
4 アクションに落とし込む

   通勤電車の中でも、とにかく目に入るものすべてを使って、ロジックツリーを立てるという訓練方法を紹介している。良いロジックツリーをつくるには、適切な指導者が必要で、早い段階でスクールに通うことも勧めている。

   つづいて、はじめに仮説ありき、という「仮説思考」の重要性を説いている。

   コンサルティング会社の社内では、常に、仮説、仮説という言葉が飛び交うという。あらかじめ仮説を立てておくことで、調べるべきポイントを絞り込めていれば、効率的なリサーチをすることができるからだ。仮説→検証→フィードバックのサイクルを高速で回すことを目指す。

    第3章では「デスクワーク術」を取り上げ、文書作成のすべては議事録書きから始まるとして、決まったこと、決まらなかったこと、確認が必要なこと、次回に向けてのTODO(誰がいつまでに)を簡潔にまとめることを強調している。

   また、外資系コンサルならみんなやっている、パワーポイントとエクセルの小ワザも参考になる。

   最終章では、ビジネスマインドについて教示している。

・時間をかけて完璧なものを目指すよりも、多少汚くてもかまわないので、とにかく早く作る
・チームの一員の責務として、リスクは早めに開示する
・コミットメントは伝染するので、社内ではコミットメントの高い人の近くにいる

   ......などの項目に共感した。コンサルティング会社ではない人でも使えるビジネススキルが満載なので、新人、若手社員に読んでもらいたい本である。

   2014年に発行され、2023年2月で第25刷を重ねているロングセラーである。(渡辺淳悦)

「コンサル一年目が学ぶこと」
大石哲之著
ディスカヴァー・トゥエンティワン 1650円(税込)

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