新型コロナウイルスによる経済の停滞も抑制され、徐々に経済のスピード感が戻ってきている。しかし、さまざまな業種で人材確保がひっ迫し、人手不足を叫ぶ声が漏れ聞こえる。
こうしたなか、帝国データバンクが2023年5月2日に発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員の人手不足は全業種で51.4%にのぼった。とりわけ「旅館・ホテル」では、人手不足が8割に迫る深刻な高水準である実態も明らかになった。
また、非正規社員で業務を行っている「飲食店」においては、8割超の現場で人手不足を感じるなど、コロナ前の水準に戻ってきていることがわかった。
全業種の過半数の企業で人手不足の実態 4月としては過去最高値に
はじめに、2023年4月時に全業種に対して従業員の過不足状況を聞いてみると、「不足」と答えた企業は「51.4%」に上った。前年同月比では5.5ポイント上昇している。
また、非正社員では「30.7%」となっており、4月としては4年ぶりに3割超の水準に達した。
同社では
「例年4月は新卒新入社員が加わることもあり、月次では(過不足状況は)やや低下する傾向があるものの、5割を上回った。4月としては過去最高を記録した」
と分析。
続いて、正社員の人手不足割合を業種別でみてみると、「旅館・ホテル」が「75.5%」で最も高くなった。毎月の統計では6カ月連続で業種トップとなり、深刻な人手不足が続いている。
次いで、IT人材不足が顕著な「情報サービス」も「74.2%」で続いた。
同社では
「実際に企業からは『案件が多いものの人手が足りない、という状況が継続している』(ソフト受託開発、神奈川県)などの声が聞かれた。」
としている。
他業種を見てみると、「メンテナンス・警備・検査」は「67.6%」と、9カ月連続の高水準。「建設」も「65.3%」は12カ月連続で6割超となった。
また、「物流2024年問題」が話題に上がる「運輸・倉庫」も「63.1%」と6割超の高水準となった。
さらに、レンタカー業などを含む「リース・賃貸」は「60.7%」とコロナ禍以降で最も高くなった。
つぎに、非正社員の業種別では「飲食店」が「85.2%」で唯一の8割超に達した。
同社は飲食業の従業員の特徴について
「飲食店は、パート・アルバイトなどを含む非正社員の就業者全体の7割以上を占めている特徴があるなかで、就業者数がコロナ前まで回復していない状態が続いている」
とコメント。
飲食店以下、「旅館・ホテル」(78.0%)、「飲食料品小売」(58.7%)、「娯楽サービス」(47.2%)など、個人向け業種が上位に多く並んでいるようだ。