「高級ブランドの下着、1000円追加で2枚に」「有名デパートの閉店セール、大特価サービス」などというネット通販の広告につられて購入すると、なんと、代金引換の宅配便で送られてきた商品は真っ赤な偽物だった。
しかも、宅配業者に支払った代金は返金が難しい――。こんな被害が急増しているため、国民生活センターが2023年4月26日、「偽物が届くインターネット通販トラブルで『代引き配達』の利用が増加しています!!」という警告リポートを発表した。
悪らつな詐欺を防ぐ3つの方法とは?
ブランドものサンダルなのに、化粧箱ではなくビニール袋入り
国民生活センターによると、ネット通販の「偽物」をめぐる被害相談は毎年増え続け、2017年度には2127件だったが、2022年度には4363件に倍増した。そのうち「代引き配達」も6割近くに達する。被害者の7割近くが女性で、被害品は高級ブランドバッグ、高級腕時計、ブランドもののサンダル、財布類などが多い。
こんな事例が代表的だ。
【事例1】「代引き配達」で宅配業者に代金を支払った後に「偽物」とわかり、宅配業者に返金を求めたが返金されなかった
SNSに国内ブランドの下着の広告が表示され、公式通販サイトの広告と思い、広告のリンク先になっていた通販サイトにアクセスした。通販サイトでは、ブラジャーが1枚約4000円で、1000円追加すると2枚購入できるということだったので、2枚5000円で代引き配達で注文した。後日、宅配業者に代金を支払って、荷物を開封して商品を確認したが、偽物だった。
通販サイトの画面は残しておらず、販売業者の情報はメールアドレスしかわからない。宅配業者にも相談したが、「荷物を開封した後は受け取り拒否にはできない。返金はできない」と言われた。送り状の依頼主の欄には、発送代行業者と思われる事業者の名称、住所、電話番号が記載されており、販売業者の情報は不明である。
当該ブランドのホームページには、当該ブランドの名称をかたったなりすましの広告に注意するようにという注意喚起情報が公表されていた。購入前に確認すればよかった。(2022年5月・60歳代女性)
【事例2】SNSの広告で、大幅に値引きされたブランド品を注文すると、「偽物」が届いた
画像専用SNSに、ブランドサンダルの広告に「キャンペーン中。注文したら2足目が無料」と表示されていた。お得だと思って通販サイトにアクセスし、ブランドサンダル2足約1万2000円を代引き配達で注文した。
宅配業者に代金を支払って、商品を確認すると、通販サイトの商品ページの画像にはブランド名の印字や刻印があったのに、届いた商品にはなく、また入れ物も化粧箱ではなくビニール袋だった。
送り状の依頼主の欄に記載されていた配送代行業者と思われる事業者に電話したが、「荷物の問い合わせは受け付けられません」との音声ガイダンスが流れた。通販サイトに電話番号の記載はない。返品するので返金してほしい。(2022年12月・40歳代女性)
偽の有名百貨店閉店セール、届いた財布は汚れていた
【事例3】有名百貨店の閉店セールをかたった偽通販サイトに、1万8000円の財布を注文してしまった
SNS上で有名百貨店が閉店セールをするので海外ブランド品が安く購入できるという広告を見て、通販サイトにアクセスした。通販サイトでは、海外の高級ブランドが通常価格より安く販売されており、財布を約1万8000円で購入することにした。
代引き配達で荷物が届き、宅配業者に代金を支払った。荷物を開封し、商品を確認すると、百貨店の包装紙はなく、ビニール袋に箱が入っており、中に財布が入っていた。もっとも、箱はつぶれ、財布は汚れており、材質も本物とは違っていたので偽物だと思った。通販サイトを探したが見つからなかった。インターネットで調べると、偽の百貨店の閉店セールが存在することを知った。(2022年5月・50歳代 女性)
【事例4】大手通販サイトに出店している販売業者に、クレジットカード払いで注文したのに、「代引き配達」で「偽物」が届いた
大手通販サイトに出店している販売業者に約3万3000円の腕時計をクレジットカード払いで注文した。その後、販売業者から「商品を送付したが、配送ミスで返送された。返金する」とのメールが届いた。しかし、代引き配達で荷物が届いたため、販売業者が支払い方法を変更したのだと思い、請求された約2万8000円を支払って受け取った。
荷物を開封すると、故障したブランド品の偽物の腕時計が入っていた。販売業者にメールで連絡したが、エラーになり連絡できなかった。大手通販サイトに相談したが、「当社を介する売買があったことを確認できない。対応できない」と言われた。クレジットカード会社に決済状況を確認すると、腕時計に関する決済は一切あがっていなかった。
代引き配達の送り状には、依頼主の住所と電話番号しか記載されておらず、当該住所に所在しているのは別の無関係の事業者で、当該電話番号は個人宅につながることを確認した。
詐欺にあったと思い、警察署に申し出たが、相談としてしか受け付けてもらえず、消費生活センターに相談するよう勧められた。約2万8000円を返金してほしい。(2022年9月・50歳代男性)
「偽物」が届く通販サイト、5つの「怪しい特徴」とは?
国民生活センターによると、「偽物」が届く通販サイトには次のような特徴があり、「少しでも怪しいと感じたら取引しない」よう呼びかけている【図表】。
(1)販売価格が大幅に値引きされている。
(2)通販サイトに記載されている日本語の字体、文章表現がおかしい。
(3)販売業者の名称(会社名)、住所、電話番号などの情報が通販サイトに表示されていない。表示されていても虚偽か、無関係の情報。(特定商取引法では、販売業者の名称、住所、電話番号などを通販サイトの広告に表示しなければならない)
(4)通販サイトで支払い方法が「代引き配達」しか選択できない。クレジットカード決済で注文したにもかかわらず、「代引き配達」に一方的に変更される。
(5)「代引き配達」の送り状で、「依頼人」が販売業者の名称(会社名、サイト名)とは異なっている。(送り状の『依頼人』の欄には、販売業者の名称(会社名、サイト名)が記載されておらず、『発送代行業者』の名称(会社名)が記載されていることがある)
「代引き配達」で宅配業者に代金を支払って受け取ってしまうと、後で商品が「偽物」だとわかっても宅配業者からの返金は困難だ。
そこで、国民生活センターではこうアドバイスしている。
(1)宅配業者に代金を支払う前に、送り状に記載されている『依頼人』の情報を確認し、注文した販売業者とは違う場合は代金を支払わず、受け取りを拒否する。
(2)受取人の同居の家族などが、受取人の代わりに受け取ってしまうケースもある。送り状の「依頼人」の情報を確認し、受取人が注文したものかどうか判断できない場合は、宅配業者にいったん荷物を持ち戻ってもらう。
(3)大手通販サイト(プラットフォーム)上の取引では、プラットフォームを介さない取引や支払いはしない。
(福田和郎)