親密な内輪だから「自分の仲間がチクるわけない」
じつは、これがSNSの厄介なところで、J-CAST 会社ウオッチ編集部の取材に廣瀬さんは、
「たとえば、ツイッターは利用者が勝手に投稿して拡散してくれるから、企業にとっては広告効果をもたらす良い面があります。しかし、投稿された情報が迷惑動画だったりすれば、悪いイメージが拡散されることになります。仮に悪意がなかった動画だとしても、投稿した当事者や企業の意図とは別に一人歩きしたり、新しい情報が昔の不祥事動画などを呼び起こしてしまい、それによって企業のイメージダウンや業務に差し障りが出てきたりします。
ただ、そうなっても企業が迷惑動画のための防衛策を講じるのは、かなり難しいでしょう。仮に防ごうと思えば、たとえば飲食店で店内の撮影を禁止にするとか、その程度の対応しかできないと思います。
一方、そうすることで、それまでSNSを見て来店していたお客が減るというマイナスの事態を招きかねません。SNSはプラスもマイナスも効果があります。そのような事態を、あらかじめリスクヘッジするのはかなり難しく、無理と言ってもいいかもしれません」
と解説する。
なぜ、このような炎上はなくならないのだろうか――。
廣瀬さんは、
「コミュニティにおける親密圏の存在が昨今の迷惑行為動画の投稿に繋がっていると考える。学生時代を思い出してほしい。休み時間に教室内で悪ふざけをしていたクラスメイトが、何人かいただろう。そこで行われたバカ騒ぎ、悪ふざけ、少々度を超えたいたずらは、他のクラスメイトが先生や大人に報告しない限り、公(問題)になるコトはなかった。構造としてはこれに近い」
と、流出する迷惑動画は現実社会における「内輪ネタ」「内輪ノリ」の延長とみる。
学校の休み時間に悪ふざけをしているノリのレベルがSNSに持ち込まれることで、非常識なモノや迷惑行為になっていく。そもそも、不特定多数のために動画を投稿しているのではなく、「特定の見せたい誰かがいる」ケースのほうが多いのかもしれない。
「親密な内輪だから、自分の仲間がチクるわけない」という、暗黙の信頼感が背景にある。