メタバース内は「純粋デジタル経済」に
説明を重ねると、純粋機械化経済は、基本的には実空間の経済だ。
では、メタバース内の経済はどうかというと、それとはまったく異なる「純粋デジタル経済」と呼んでいる。
デザインしたら生産活動は終わりで、物質的なモノを製造する必要がない、「デジタルな財・サービスのみが供給される経済」だ。
その3つの特徴として、生産活動に必要な「資本財」ゼロ、生産量を増やす際に追加的にかかる費用を意味する「限界費用」ゼロ、それぞれの会社や事業者が差別化された財を提供していて、その財同士にある程度の代替性がある「独占的競争」を挙げている。
したがって、メタバース内の供給は絶対的な過剰性をはらんでおり、供給の無限性、空間の無限性、移動速度の無限性という性質を持っている。
メタバース内の経済では資本財をほとんど必要としないので、資金があまりいらなくなる。分散型自律組織(DAO)とも相性がよく、脱近代資本主義を促進するかもしれないという。
しかし、メタバースが普及しても、その外の社会では相変わらず、資本財の購入のために莫大な資金が必要とされ、株式会社が主流の、これまで通りの経済だ。それでも資本主義は大きく変容すると見ている。
それは、「頭脳資本主義」が全面化した経済だ。
これは、もともとは物理学者で神戸大学名誉教授の松田卓也さんが考案した言葉。労働者の頭数でなく頭脳のレベルが、企業の売り上げや国のGDPを決定づける経済と、井上さんは解釈している。