JPモルガンは今や、ウォール街の「駆け込み寺」
つづいて同欄では、日本経済新聞社上級論説委員/編集委員の小平龍四郎記者が、FRCの救出に動いたJPモルガンについて解説した。
「JPモルガンは2008年の金融危機の際、(大手投資銀行の)ベア・スターンズとワシントン・ミューチュアルを買収しました。同社のダイモン最高経営責任者(CEO)はウォール街で当時を知る数少ない現役経営者。今や、ウォール街の駆け込み寺の様相すらあります」
と指摘。そのうえで、
「ダイモンCEOはここ数年、リーマン・ショック後に強化された金融規制の緩和を求める急先鋒のひとりでもありました。FRC買収で当局に恩を売る一方、予想される金融規制・監督の強化で配慮を求める。そんなバーターがあるのではないかとも思ってしまいます。そうであるなら、あまり健全な姿ではなく、金融システムの脆弱さはいぜんとして残ります。いつまでも『ダイモン頼み』は続けられません」
と、ウォール街の複雑怪奇な事情を説明した。
一方、ヤフーニュースコメント欄では、日本総合研究所上席主任研究員の石川智久氏はJPモルガンのダイモンCEOの手腕を高く評価した。
「JPモルガンは米銀大手であり、CEOのダイモン氏は今や少なくなったリーマン・ショック時からの銀行経営者です。ファースト・リパブリック銀行が破綻したのはマイナスの影響がありますが、破綻して間もなく、経験豊富な経営者が経営する銀行が、政府と連携して処理することとなったので、金融市場への悪影響は一定程度抑えられるとみられます」
こう指摘して、破綻処理はスピードが重要だとした。
「いま銀行の破綻制度はリーマン・ショック以降、世界中で整備されてきていますので、かつてより金融危機は起きにくくなっています。仮に金融危機があるとすれば、ノンバンクのほうが注意は必要です」
今後は、投資ファンドやヘッジファンドなどノンバンクの破綻に警戒すべきだとした。
同欄では、日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員の小山堅氏が、原油価格の動きに注目すべきだと指摘した。
「破綻と同時にJPモルガンによる買収も発表されたことで、市場の動揺は現時点では大きくないように見える。とはいえ、米国市場での金融不安がくすぶり続けていることは事実であり、これが株価や米国経済を下押しする作用を働かせ続ける可能性は高い。
その結果、特に原油価格にはダウンサイドリスクが意識されやすくなるだろう。原油価格が下落すれば、再び焦点はOPECプラスの対応に移る。ちょうど1か月前には、OPECプラスはサプライズの減産に踏み切った。今後も原油価格の動向とOPECプラスの動きは要注意だ」